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对「とる」及其复合动词的再认知

学校代码:10225

学号:S16345

学位论文

对「とる」及其复合动词的再认知

石泽玮

指导教师姓名:王佳音副教授东北林业大学

申请学位级别:硕士学科专业:外国语言学及应用语言学论文提交日期:2016年4月论文答辩日期:2016年6月

授予学位单位:东北林业大学授予学位日期:2016年6月

答辩委员会主席:陈百海

论文评阅人:陈百海郭永刚

University Code:10225

Register Code :S16345

Dissertation for the Degree of Master

Re Cognition of“toru”and Its Compound Verbs

Candidate: Shi Zewei

Supervisor: Associate Professor Wang Jiayin Academic Degree Applied for: Master of Arts

Speciality: Foreign Linguistics and Applied Linguistics Date of Oral Examination: June, 2016

University: Northeast Forestry University

摘要

动词在日语中的地位可谓举足轻重,而我国日语学习者由于受到母语文化的影响对日语动词的语义掌握往往不够到位。其中对于复合动词的习得状况更是不容乐观。对此,作者试图运用认知语言学来探究动词的多义性及其复合动词。

本文以「とる」为例展开研究,在国广弥哲、松田文子、郭永刚等国内外学者的先行研究基础上,从「とる」的两个看似语义矛盾的义项入手,假设「とる」的核心语义。通过论证该核心语义与其它义项的关系对其进行确认,同时建立「とる」的语义网络。

然后,在对相关复合动词进行整理归纳后发现,「とる」可与「去る」「込む」等运动方向截然相反的动词复合,在看似违背“单一经路原则”的背后,是认知焦点的投放差异在发挥作用。由此可知动词的复合实则是动词义项的复合。运动方向作为动词语义的所属内容,在复合动词的构成阶段已发挥作用。「とる」在复合动词中的语义变化则经历了“具体义项”、“语义虚化及接头辞化”、“与另一动词合体”三个阶段。此外,由于动词语义的虚实差异,以及人对事物认知的图地转换,亦会造成对前后项构成动词的认知差异。一者被相对忽略尤其是语义虚化时,另一者的多义性可以直接引发该复合动词的多义性。

对此,笔者认为在最初向日语学习者教授复合动词相关内容时,即有必要传输义项概念,清楚在该复合动词中所涉及的前后项动词的具体义项,从而更好掌握复合动词。

关键词认知语言学;多义;复合动词;とる

要旨

日本語では動詞の重要性が言うまでもないが、母語文化のせいで我国の日本語学習者が日本語動詞の意味をよく身につけられない。そして、日本語複合動詞に関する習得状況が甚だしく楽観ではない。したがって、筆者は認知言語学理論を利用して、日本語動詞の多義性及びその複合動詞を研究する。

本文は「とる」を例として研究が行われた。国広哲弥、松田文子、郭永剛など国内外の学者の先行研究に基づき、矛盾に見えるような「とる」の二つの意味項目から、「とる」のコア意味を設定する。そのコア意味は複数の意味項目との関係を探すことを通して確認された。同時に「とる」の意味ネットワークも構成してみた。

その後、「とる」の複合動詞に視点を置いた。「とる」に関する複合動詞を取りまとめた後、「とる」が「去る」「込む」など違う運動方向を表す動詞と複合できることに気づいた。「単一経路原則」を違反したようにみえるが、実は認知焦点の違いにあるのである。動詞の複合は実は意味項目のレベルで実現されている。運動方向は意味に属する部分として、複合動詞の構成時にも影響を及ぶす。「とる」の意味は複合動詞の中で「具体的な意味項目」、「意味希薄化及び接頭辞化」、「ほかの動詞と分けられない」三つの段階を経っている。そのほか、意味の虚実と認知図地転換によって、前?後項動詞に対しての認知も違うのである。両者の中一つの意味が抽象的に、特に希薄化になる時、偏重する部分の多義が直接にその複合動詞の多義を引き起こすのである。

したがって、日本語学習者に初めて複合動詞を教える時、よく理解させるために、意味項目の概念を伝え、前?後項動詞の意味項目をはっきりさせたほうがいいと筆者は考えている。

キーワード認知言語学;多義;複合動詞;とる

目録

1前書...................................................................................................................................... - 1 - 2先行研究.............................................................................................................................. - 3 - 2.1「とる」に関する研究................................................................................................... - 3 - 2.1.1国外研究......................................................................................................................... - 3 - 2.1.2国内研究......................................................................................................................... - 4 - 2.2 複合動詞に関する研究................................................................................................... - 5 - 2.2.1体系的研究.................................................................................................................... - 5 - 2.2.2意味的研究.................................................................................................................... - 6 - 3本研究に応用された主な認知言語学理論...................................................................... - 8 - 3.1メタファー........................................................................................................................ - 8 - 3.2 イメージ?スキーマ....................................................................................................... - 9 - 3.3 主体化............................................................................................................................. - 10 - 4「とる」の多義について.................................................................................................. - 12 - 4.1「とる」の複数意味....................................................................................................... - 13 - 4.2「とる」のコア意味とイメージ?スキーマ............................................................... - 16 - 4.3「とる」の意味ネットワーク....................................................................................... - 19 - 4.3.1 起点による意味拡張.................................................................................................. - 21 - 4.3.2 終点による意味拡張.................................................................................................. - 23 - 5「とる」からなっている複合動詞.................................................................................. - 27 - 5.1動詞の複合...................................................................................................................... - 28 - 5.1.1運動方向の制限........................................................................................................... - 30 - 5.1.2意味関係....................................................................................................................... - 33 - 5.2前項/後項動詞の認知..................................................................................................... - 34 - 5.3「とる」の複合動詞の多義........................................................................................... - 38 - 6結論.................................................................................................................................... - 42 - 参考文献................................................................................................................................ - 44 - 在学中公表した論文............................................................................................................ - 46 - 謝辞........................................................................................................................................ - 47 -

1前書

現在日本語を習うブームの中で、複合動詞1という難点が依然として存在していることは、残念であるにほかならない。なぜかというと、複合動詞は日本語で重要な地位を占めている。全品詞の中、動詞グループ(動詞および動詞的な造語成分)の占める割合は11.4%であり、そして、日常生活の中で使用している動詞の約4割が複合動詞である2。張威研究グループは、23万あまりの見出し語を収録した『広辞苑(第4版)』(岩波書店)に掲載された複合動詞を全部抽出し統計した。その結果、動詞は12630語で、総収録語数の6%強を占めており、複合動詞の見出し語数は延べ5422語であり、動詞全体の約43%を占めている、ということが明らかになった。

そんな重要性に対して、日本語学習者の習得状況が楽観ではならない。「学習者は個々の単純動詞の意味?用法を習熟するが、それらの動詞を組み合わせた複合動詞については、勉強の機会があまりない。したがって、複合動詞に関する日本語学力が不十分なまま上級段階に進んでしまい、圧倒的に多い複合動詞の波にぶつかって苦しまねばならぬ。」と森田良行(1978)は報告している。田中衛子(1996)は、「現在の学習者の複合動詞使用状況に対して、姫野の指摘3が出てから20年あまり経ったが、この間、日本語学習者数や各種の教科書の出版数における飛躍的な増加がみられるにもかかわらず、複合動詞の使用に関して、現在の学習者も20年前の学習者とほとんど変わらないように見える。」を強調している。

1複合動詞を考えようとする場合、従来の研究を大別すると、「付く合う」、「立ち上がる」のように「動詞連用形+動詞」の形を成すもののみを複合動詞として認める場合と、「動詞連用形+動詞」以外にも、「気づく」のような「名詞+動詞」、「近寄る」のような「形容詞語幹+動詞」、「ぼんやりする」のような「副詞+動詞」など、動詞を後要素となる複合語をみんな、複合動詞として認める立場に分かれることになる。筆者は前者の概念を認める。

2国立国語研究所(1956)が実施した『現代雑誌90種の用語調査(昭和31年)』

3姫野昌子(1975)は、「留学生の作文などを読んでいると、複合動詞の使用が少ないのに気づく。そのせいか、語彙的にどことなく単調で、幼い感じを受けることが多いようだ。」と指摘している。

何志明の調査4によると、複合動詞をなす前項動詞と後項動詞の意味拡張は日本語学習者の習得に重要な影響をおよぼす。「生産性が高い」も複合動詞の習得難の一点である。したがって、筆者は「人」との関わりにおいて「ことば」を考える「認知言語学」の姿勢から、動詞の多義性を研究して、それとその複合動詞との関わりを探し出すと複合動詞の習得に役に立つと考える。精力と能力の限り、筆者はとりあえず「とる」をめぐって、この研究を行う。まず、辞書で「とる」の複数意味を取りまとめる。それで、「とる」の相反する二つ意味項目に踏まえて、コア意味を探し出し、意味ネットワークをたてる。その上で、「とる」の複合動詞「とり~」「~とり」を研究する。

4何志明.香港の上級日本語学習者による日本語複合動詞の習得に関する調査.2009

2先行研究

2.1 「とる」に関する

「とる」についての研究はもういろいろ行われた。その中、国外(主に日本)では影響力があるのは森田良行、国広哲弥、松田文子に出された研究成果である。国内の学者も「とる」について研究して試みた。

2.1.1国外研究

森田良行は、彼に編纂された『基礎日本語―意味と使い方』(1977年)と『基礎日本語辞典』(1989年)で、「対象とする事物に作用?行為を加えて、自己側の領域に移す、その結果、対象がその位置から失わせたり、滅したりする場合と、なんらか異同を生じない場合とがある。」と「とる」の意味を述べている。それで、「とる」の意味は対象の移し方によって三段階に分けた。また、主体の移動目的によって「とる」の意味を分類した。

国広哲弥は、「とる」は「獲得」と「除去」という相反する二つの意味を持ち、学習者を常に混乱させると言い出した。役に立つと考えるのは国広がこのような相反する二つの意味の関係を「現象素」という概念を用いて解明するところである。「とる」の現象素として、「どこかに置いてある物を手でつかんで、そこから引き離す」という動作を考える。その現象素を三つの認知要素に分解したら、①把握、②獲得、③離脱(除去)になる。「ペンをとる」なら「把握」に、「貝をとる」は「獲得」、「しみをとる」なら「離脱」にそれぞれ焦点が置かれる。

松田文子は、意味記述の方法として「コア図式論」を援用している。それを用いて多義動詞「とる」の意味特徴を「元ある場所?状況(移動元)から対象を主体のコントロール可能領域(移動先)に移し、それを意図?状況に適うように扱うこと」と述

べた。また、「とる」の様々な意味項を取り上げ、焦点化の違いによって用法を六つに分けている。

2.1.2国内研究

郭永剛は、彼に書いた『日本語動詞の派生·释义·使用』(2013年)で、日本語のすべての動詞が五十音図の46の仮名に生み出すと提唱した。例えば、「あう」「あける」「あまる」など「あ」をはじめの仮名としている動詞は「あ」族に属する。「とる」は「と」をはじめの仮名としているから、「と」族に属する。「と」族の動詞は人間の手と足に関わっているから、その意味も手と足に緊密な関係がある。それで、「とる」の元意味を「手で物を自分の意志で処理する」と定義した。日本語でそれぞれ「取る」「採る」「撮る」「捕る」「執る」「獲る」「摂る」「盗る」という形で表記するのは、「とる」の意味をもっと具体に表すからであるが、日本人の生活ではそんなに細かく漢字で分けられるのではない。同時に、「とる」の意味を16の場合に分けて説明する。

魯丹は、彼女の「『とる』の用法分析―動詞『とる』と前項動詞『とり~』?後項動詞『~とる』の関係」5という修士学位論文で、コア図式論とプロトタイプ理論を利用して、「とる」についての複数意味を分析して、「とる」の意味フレームを建てた。その上で、「とる」に関する複合動詞「とり~」と「~とる」を整理して、「とる」と「とり~」、「とる」と「~とる」の意味関係を明らかにした。

于鵬は、彼の修士学位論文――「多義動詞『とる』についての認知研究」6で、「とる」は対象を移動させる類の移動カテゴリーに属し、そのプロトタイプ的な意味は「対象を手に持って操作する」と提唱した。それで、手に持ってからの操作の方向

5ハルビン:黒龍江省大学.2010

6ハルビン:東北林業大学.2010

性によって、「とる」の複数意味を「手」「自分側への移動」「他方への移動」と三つの認知焦点に分けている。「とる」が前の目的語によって意味が違う、すなわち、文脈が大きな役割を果たしていると発見した。最後に「とる」の意味ネットワークを形成した。

2.2複合動詞に関する

複合動詞に関しての研究はたくさんある。松田文子(2002b)の専門研究によると、今まで複合動詞についての研究にあらわれてきたテーマを具体的に分類すると、四つに分けられている:①体系的研究:複合動詞の結合条件、分類方法に関する研究。②意味的研究:個々の複合動詞、特に後項動詞の意味的側面に関する研究。③ほかの言語との対照研究:主に漢語、韓国語、英語との対照研究。④習得、教育方に関する研究:複合動詞の習得および指導方に関する研究である。紙幅が限られているので、本論では触れてみようとするのは体系的研究と意味的研究である。

2.2.1 体系的研究

寺村秀夫(1984)は、複合動詞を、それを前項と後項の独立性という点から次のように四つのタイプに分けている。それぞれが単独で使われるときの意味、文法的特徴が、複合体の中でも保持されているものをV(「自立V」)、単独の場合とは全く、あるいはかなり違っているものをv(「付属V」)で表すことにする。①V-V:呼び入れる、握り潰す、殴り殺す、ねじ伏せる、出迎えるなど。②V-v:降り始める、呼びかける、思い切る、泣き出すなど。③v-V:差し出す、振り向く、打ち立てる、引き返すなど。④v-v:払い上げる、(話を)切り上げる、(仲を)取り持つ、(芸を)仕込むなど。4類型のうち、①と②はさまざまな語との組み合わせが可能であり、

③と④は生産性が低いとされている。この分類法は、かなり広い視野に立って行われたものであり、しかし、「自立V」を「付属V」を判断する基準が明示されていないという点についての批判も多かった。

長嶋善郎(1976、1997)は両項における修飾関係から複合動詞を2類に分類した。

①類:v1+V2(修飾要素+被修飾要素):「Nが(を?に)V2」と言えるもの(例:「(木を)切り倒す」「(街中を)見廻る」「(木に)よじ登る」など)。②類:V1+v2(被修飾要素+修飾要素):「Nが(を?に)V1」と言えるが、「Nが(を?に)V2」とは言えないもの(例:「(本を)読み通す」、「(インクが)染み込む」など)。この分類は、①類と②類の分類基準が明示された点が寺村を一歩進めたものであると評価される一方で、他の類型についての言及がないことも指摘されている。

山本清隆(1984)では、複合動詞の格成分が前項動詞または後項動詞とどのような対応をみせるかに着目し、格支配のあり方による分類を以下のように設定している。

①類:複合動詞の格成分が、前項動詞と後項動詞のそれぞれに対応関係にあるもの(例:男が烟草を投げ捨てる→男が烟草を投げる、男が烟草を捨てる)。②類:複合動詞の格成分が前項動詞とは対応を示すが、後項動詞とは対応しないもの(例:男が空を見上げる→男が空を見る、*7男が空を上げる)。③類:複合動詞の格成分が後項動詞とは対応するが、前項動詞とは対応しないもの(例:災難が打ち重なる→*災難が打つ、災難が重なる)。④類:複合動詞の格成分が前項動詞とも後項動詞とも対応しないもの(例:男が失敗を繰り返す→*男が失敗を繰る、*男が失敗を返す)。

2.2.2 意味的研究

影山太郎は生成文法の立場から複合動詞の成す過程の違いに着目し、以下のように7*は格支配関係を持っていない文の前につく

複合動詞を①語彙的複合動詞と②統語的複合動詞の2種類に分類している。①具体的に意味から見ると語彙的な結合制限があり、補文関係をとらない複合動詞である(例:飛び上がる、沸き立つ、書き込む、吸い取る、貼り付ける、探し歩く、飲み歩く)。②補文関係を取る複合動詞で、「話し始める」が「話すことを始める」と言い換えられるように前項が後項の目的語(もしくは主語)になるものである(例:話し終わる、払い終わる、話し始める、しゃべり続ける、歩きすぎる)。

個々の多義的複合動詞後項に関する研究に関して、姫野昌子の連作(1975、1976、1977、1978a、1978b、1980、1982a、1982b)は最も周到なものである。姫野は、「~つく」「~つける」、「~あがる」「~あげる」、「~でる」「~だす」、「~こむ」、「~かかる」「かける」、「~きる」「~ぬく」「~とおす」、「~あう」「~あわせる」など複雑な多義的複合動詞後項の意味、用法を整理分類し、さらに類義語との意味的差異を明らかにした。1999年に、これらの研究成果をまとめた『複合動詞の構造と意味用法』という単行本が出版された。姫野昌子の一連の研究によって複合動詞の意味研究は大きく進展したと言える。

3本研究に応用された主な認知言語学理論

認知言語学は、ゲシュタルト的な知覚、視点の投影?移動、カテゴリー化などの人間が持つ一般的な認知能力の反映として言語を捉える。これまで説明できなく理解しがたい言語現象を、一般的な認知能力の発現として捉え、記述と説明をよく行っていく。意味は静的なものではなく事態把握?語用論的面を含めたダイナミックな「概念化」として記述するから。次は本研究に応用された主な認知言語学理論を紹介させる。

3.1メタファー

レイコフとジョンソン(Lakoff and Jonhson 1980)の主要な論点は次のようにまとめられる。

(1)メタファーの本質は、単にことばの問題ではなく、ある概念領域を別な概念領域でもっと理解するという、我々の認知の営みにある。

(2)我々の概念体系の多くはメタファーによって構造されており、これが言語表現としてのメタファーを可能にし、我々の行動様式に影響を与える。

(3)メタファーは単なることばの飾りや詩的表現などではなく、広く日常言語に見られるものである。

例えば、我々は「議論」という概念領域を「戦い」という概念領域の視点から理解しており、この理解が「議論」の概念の一部を構成している。こうした「議論は戦いである」というような概念を構成するメタファーが、「議論を戦わせる、論敵、議論に勝つ/負ける」などの個々のメタファー表現を可能にするとともに、議論の相手を憎らしく思ったり、議論に負けると悔しく思うなどの議論の際の行動に影響を与えるのである。

また、レイコフとジョンソンは、メタファーが何らかの経験的基盤を有する点を強

調した。例えば、「数量の多さ/少なさは上/下である」(例:気温が上がる、給料が下がる)というメタファーは、ものを積み上げていくと高さが上に行くという身体経験、「理解することは見ることである」(例:全体像が見えてきた、物の見方)は、知覚に占める視覚の優位性に根ざすとされる。こうした経験的基盤を有するメタファーは高度に普遍的であることが予想される。

3.2イメージ?スキーマ

ことばの形成と概念化に先たって存在する心的現象に関わる認知能力一つ。我々は日々、具体的な身体経験に基づいてさまざまなイメージを形作っている。例えば、視覚は空間認知に関わるイメージ「上?下」「左?右」「前?後」「部分?全体」「中心?周辺」などを生み出すもとになっている。「前?後」で言えば、人間は目や鼻などを感覚器官のあるほうを「前」、その反対を「後ろ」と捉えるイメージを持っている。他方、スキーマとは、経験を抽象化?構造化していられる知識形態のことで、対象の理解を促進する規範や鋳型としてはたらく。したがって、イメージ?スキーマと言った場合、種々の身体経験をもおとに形成されたイメージを、より高次に抽象化?構造化し、拡張を動機付ける規範となるような知識形態をいう。

よく知られているイメージ?スキーマとしては、「前?後のスキーマ」「遠?近のスキーマ」「容器のスキーマ」「部分?全体のスキーマ」「起点?経路?着目スキーマ」などがある。例えば、「容器スキーマ」では、人間が自分の体を容器としてイメージし、容器の内側?外側?境界を設定することで物事を理解する仕組みになっている。例えば、「視界に入る(から出る)」、「頭がからっぽ(アイディアが詰まっている)」、「愛情を注ぐ(が溢れる)」、「結婚生活に閉じ込められる(から解放される)」など。英語ではcome into sight/go out of sight/empty-headed/trapped in a

marriage/get out of a marriageなど。「視界に入る(から出る)」では視界(sight)が境界をもった容器と捉えられ、何かがその内?外に出入可能(into、out of)とみなすことで事態や事物が「間近に迫っている(遠ざかっている)」状況を表現している。どうように「頭がからっぽ」と言ったときの「頭」(head)は容器であり、その中の状態(empty)に言及することによって、その人物の特徴(empty-headed)を述べている。

3.3主体化

ラネカー(Langacker)はすべての言語表現には主体の解釈が内在しているというまさにそのことを認知図示を用いて明示的に表している。そして、言語においては、この主体の解釈が顕在化するという意味変化が見られるとし、それを主体化(subjectification)と呼んでいる。ラネカーによる主体化の定義は以下の通りである。

主体化とは、言語表現の語彙的意味のなかに本来内在し、その意味でその語彙的意味の最も深い特性を構成している概念的操作が顕在化することをいう。

ここで注意しなければならない点は、すべての言語表現には、必ず主体の解釈が反映されているのだから、完全に客体的な表現というのは存在せず、ただ、より客体的な表現(主体の解釈によらない、客体的な要素の多いもの)があるだけだ、ということである。また、ラネカーも指摘しているように、主体化という意味変化においては、客体的な意味が急に主体的な意味に変化するのではない。客体的意味が徐々に薄れていく代わりに、主体的意味が徐々に顕在化してくるのである。

主体化は文法化のプロセスにおいてしばしば中心的な役割を果たす。例えば、「Sam is going to mail the letter」は、「サムは手紙を出しに行く途中である」と「サムは手紙を出すつもりだ」の二つの意味で、はっきりしていない。前者では主語サムが

空間的に移動し、to不定詞で表される「手紙を出す」は移動目的であり、移動の到着点においてなされる行為である。それに対して、後者では主語サムが空間的に移動するわけではなく、概念主体が時間軸を心的走査し、「サムが手紙を出す」という出来事を、発話時から後に生じるものとして位置づけている。よって動詞goが、未来を表すマーカーのbe going toに発展する文法化のプロセスにおいて、主体化が関与していることになる。

4「とる」の多義について

籾山洋介が認知意味論によって多義性分析をプロトタイプ意味の認定、複数の意味の相互関係、複数の意味をすべてを統括するモデル?枠組みの解明を三つの課題に分けた。本章も籾山洋介が提出した課題分析を踏まえて、国広哲弥、松田文子と郭永剛の先行研究に基づいて、筆者自分の考えを入れて「とる」の多義性を研究する。大体辞書によって「とる」の意味項目を整理する。複数違う意味項目からその共通点を探し出して、「とる」のコア意味を仮定する。それで、各意味項目との関連を究明しながら、仮定したコア意味を確認する。

まず明確しなけらばならない点は「取る」?「採る」?「撮る」などは一つの単語「とる」としているか、あるいはそれぞれの単語と見られるか。それで、認知言語学から多義語と同音異義語の区別を具体例にもとづく検討する。以下の例を見てみよう。

(1)a.はな(花)が散る。

b.はな(鼻)が長い。

(2)a.家はここからとおい。

b.期末試験の日はまだまだとおい。

(1)の「はな」をいう音形に対応する「鼻」と「花」はお互いに何らかの関係を見出すことは易くないであろう。認知的な視点からみると、一方の意味から何らかの比喩に基づきまた一方の意味が生じたとは考えられない。すなわち、「鼻」と「花」の場合は、両方も「はな」という音形を有しているということである。これは同音異義語に属する。

(2)の「遠い」は、メタファーの理論からみると、両者は関係がある。(2)bの「遠い」は(2)aの「遠い」の「空間」の意味から「時間」の意味へメタファーに基づいて拡張すると考えてられる。すなわち、両者には「話題に関する両方の間隔が大

きい」という共通点が見出せる。このように、「遠い」が多義語であると考えられる。

以上の論じることで「取る」?「採る」?「撮る」を見てみよう。三者の間では、(2)aの「遠い」と(2)bの「遠い」のように、共通点があって、比喩などに基づいて意味拡張する関係である。具体的な研究は後でおこなう。本研究は「取る」?「採る」?「撮る」のような同じ音形「とる」を持っていて、ただ漢字で意味分化した結果としていくつか生じたの単語はいっそう一つの単語と認められる。すなわち、漢字で表された単語(「取る」?「採る」?「撮る」など)はその同じ音形に対する単語(「とる」)の語釈の項目である。

4.1「とる」の複数意味

「とる」は広く使われる動詞として、その意味が多方面にわたっている。筆者がいくつかの辞書で「とる」の意味を調べた後、以下の内容を気づいた。『新明解国語辞典第六版』に述べられる「とる」の意味はほかの辞書より、項目が少なく、総合性も高く持っている。それに反して、『goo国語辞書』8では「とる」の意味項目が多く、内容がもっと詳しく、13項までに分けられて解釈している。したがって、筆者が『新明解国語辞典第六版』と『goo国語辞書』に踏まえて、「とる」の複数の意味項目を以下のように取りまとめた。

ア:手の中におさめる。手に持つ。

1.手でつかむ。握って持つ。「その本をとって見てください」「胸ぐらをとる」

2.手に持って動かす。手を働かして何かをする。操作する。「舵?(かじ)?をと

8goo国語辞書は、約28万300項目(2015年12月現在)を収録した小学館提供の『デジタル大辞泉』を搭載しています。

る」

イ:いろいろな方法で必要(有効)なものを自分の物にする。

3.生きていくための、えものや作物を手に入れる。収穫したり、捕獲したりする。「山菜をとって暮らしを立てる」

4.材料?原料からとり出したり、作り出したりする。製する。「豆から油をとる」

5.相手からもらってこちらのものにする。手に入れる。「金メダルをとる」「休みをとる」「免許をとる」「税金をとられる」

6.(摂る)必要なものとして体内にとり入れる。「栄養をとる」

7.(採る)みちびき入れる。「明かりをとる窓」

8.(その家の者として)人を迎え入れる。「内弟子をとる」「婿をとる」

9.(「盗る」とも書く)人のものを無理に自分のものとする。盗む。奪う。「力ずくで財布をとる」「現金だけとられた」

10.注文して届けさせる。いつもそこで買う。「お昼にすしをとる」「酒はあの店からとる」「新聞をとる」

11.自分のものにすることを前もって約束する。予約する。「芝居の席をとる」12.身にひきうける。「責任をとる」「正直だという評判をとる」「父の跡をとる」

13.客として相手をする。「芸者が客をとる」

14.年などをかさねる。「年をとる」

15.そのように解釈したり、判断したりする。解する。「文字どおりにとる」「悪くとる」

16.数量をはかる。数える。調べる。「統計をとる」「寸法をとる」「タイムをとる」「脈をとる」

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