課題名5ZB-1206 放射能汚染土壌の除染実用化技術の開発課題代表者名逸見彰男(愛媛大学農学部特命教授)
研究実施期間平成24~25年度
累計予算額72,320千円(うち25年度36,160千円)
予算額は、間接経費を含む。
本研究のキーワード土壌除染、放射性セシウム、磁化ゼオライト、Na-P1型人工ゼオライト、モルデナイト、磁選機
研究体制
(1)磁性化高CECゼオライトの製造技術の開発(愛媛大学)
(2)放射性土壌分離用磁選機の開発(愛媛大学)
研究概要
1.はじめに(研究背景等)
2011年3月11日の東日本大震災において福島原子力発電所から発生した放射性物質が飛散したことによる土壌汚染、水質汚染等の環境汚染が深刻な問題となっている。特に放射性セシウム(Cs)は周期律表においてカリウム(K)と同じ族に属しているため植物や生体は同様に吸収し内部被曝の原因となる。Csは他の放射性同位体と比べ多くの量が放出されており、また137Csの半減期も長いことから汚染土壌での農業の生産に大きな打撃となっている。これらのことより、放射性Csの土壌からの除染が緊急課題である。しかし、土壌からの除染はきわめて難しく、本研究におけて開発した磁化ゼオライトを用いた磁選による除染技術は新しい除染方法として期待できる。
2.研究開発目的
放射性Csの除染方法としてゼオライトを用いる方法が検討されてきており、我々は石炭火力発電所から排
出される石炭焼却灰を原料としてアルカリ処理により合成したNa-P1 型人工ゼオライト(Na
6Al
6
Si
10
O
32
?12H
2
O)
が安価かつ高い陽イオン交換容量(CEC)をもつことに注目し検討を進めてきている。Na-P1型ゼオライトは構造中にCs+よりわずかに大きい0.38nmの空隙をもつことから優れた選択捕獲特性を持つことが注目される。除染方法として、溶液中の放射性Csは比較的容易に回収でき、例えば汚染された水をゼオライト充填したカラムに通すことにより除染することが可能である。しかし、土壌の除染は、ゼオライトを水田などに散布してCs吸着させ
てもそれを回収する方法がない。一方、磁石の原料であるマグネタイト(Fe
3O
4
)のナノ微粒子も鉄の塩化物のア
ルカリ処理により合成することができ、この合成法はNa-P1ゼオライトと酷似している。
そこで、我々は、同じ容器内に原料を入れ同時にアルカリ処理することにより磁性を有するゼオライト-マグネタイト複合材料(以下、磁化ゼオライトとする)が合成できることを見いだした。これにより水田などに散布し、Cs
吸着後の磁場回収が可能となる。これまでに、ゼオライトを合成する際に市販のマグネタイトを混合したり、マグネタイトを合成する際に市販のゼオライトを混合したりといった方法の報告があるが、同時に合成する方法については報告がない。本研究のゼオライト粒子中にマグネタイトナノ微粒子が入った一体型の複合材料とすることがきわめて重要であり、我々は、現場の実証試験において、混合物を顆粒状にしたものを用いた場合では土壌と撹拌した際にゼオライトとマグネタイトが分離するという失敗をすでに経験している。
本研究では土壌中に存在する放射性Csを除去する方法としてNa-P1型ゼオライト-マグネタイト複合材料の作製を行なった。さらに汚染土壌と磁化ゼオライトを混合し、放射性Csを吸着させた後、磁石選別により磁化ゼオライトのみ回収することで除染することを目的として、磁選機の開発、現場実証試験、溶出助剤の開発などについての研究を行なった。
3.研究開発の方法
(1) 磁性化高CECゼオライトの製造技術の開発
Na-P1型人工ゼオライトとマグネタイトの作製方法はアルカリを入れて加熱するという点で類似しており、同時に作製することが可能である。本研究では、石炭灰を原料とするNa-P1型ゼオライトの反応時間やNaOH 濃度、NaAlO 2の添加効果などについて研究した。また、磁化Na-P1型ゼオライトの合成条件を検討し、その性能を評価した。さらには、水田に応用するために、企業に依頼し約50kg の大量合成条件について検討を行ない、水田における除染に用いる磁化ゼオライトの最適合成条件を見出した。
また、Na-P1型ゼオライトよりもセシウム除染能力の高いモルデナイトNa 8[Al 8Si 40O 98]?24H 2O の人工合成について合成条件の決定を行ない、さらに磁化モルデナイトを合成しその性能評価を行なった。
(2) 放射性土壌分離用磁選機の開発
サブテーマ(1)で合成した磁化Na-P1ゼオライトと水田の土壌を混合した後、放射性セシウム吸着後の磁化ゼオライトを磁選回収するための装置の開発を行なった。また、その装置を用いて、土壌から放射性Cs を取り除く実証実験を福島で実施した。具体的には、平成24年度では、土壌に1割の磁化Na-P1型ゼオライトを混入し、K +塩やNH 4+塩などの溶出助剤を加えてミキシングを1回行ない、磁選操作を繰り返し除染実験を行なった。平成25年度では、磁選機の改良も行ない、引き続き土壌の除染実験を行なった。さらに、溶出助剤の検討についても行なった。また、除染に使用した磁化ゼオライトの再使用により磁化ゼオライトの使用量を削減することが可能であるかどうかの検討を行なった。
4.結果及び考察
(1) 磁性化高CECゼオライトの製造技術の開発
図1は磁化ゼオライト(マグネタイト30wt%)のTEM 結果である。(a)のTEM 写真から磁化ゼオライトの粒子サイズは数μm程度であった。(b )のTEM 写真からゼオライト粒子内にナノサイズのマグネタイトと凝集したマグネタイトがゼオライトにとりこむように存在していることが観察された。TEM 写真内の物質は電子回折パターンにより
Na-P1型ゼオライトとマグネタイトであると判断した。ゼオライト粒子内にマグネタイトは取り込まれるように存在しておりこれはゼオライトがマグネタイトの生成より遅く生成したため包み込むような形で合成されたためではないかと考えられる。従って、一体型の複合材料を形成していることが確認できた。
図1 磁化ゼオライト(マグネタイト30wt%)のTEM による明視野像結果(a)低倍率(b)高倍率
また、性能の優れた磁
性化Na-P1型ゼオライトの製造条件を見出した。大量?安価な製造条件も検討しほぼ確立した。
さらに、よりCs +捕獲能の優れたモルデナイトの人工合成と磁性複合化を行なった。大量?安価な製造条件については、装置の温度を高温にできれば可能であり、安価な原料によるコスト減が必要である。
(2) 放射性土壌分離用磁選機の開発 1) 磁選機の開発
平成24年度に磁選機メーカーとともに土壌から磁化Na-P1型ゼオライトを分離する磁選機の開発をおこない
磁選機の第1号を作製した。さらに、現場実証試験の結果を基に、平成25年度では磁化ゼオライトの吸着部であるネオジム磁石とスクレーパーを改良した2号機を作製した(図2)。
500nm
20nm
(a)(b)
(c)(d)Magnetite Nano-particles
Magnetite Zeolite magnetites
2)現場における除染結果
a. 除染結果(平成24年度)
平成24年度(平成24年7月?11月)に福島にて磁選機の1号機を用いて行なった結果を示す。図3に飯館村の土壌(12000?16000Bq/kg)を用い磁選操作を行なった場合の磁選段数による放射能濃度(134Csと137Csの合計値)の変化を示す。「回数」ではなく「段数」としたのは、溶出助剤の混合が最初の1回のみであり、磁選機の構造は1段の磁選であり、これを複数回繰り返すことにより実験を行なうが、磁選機に3つの磁石を取り付けて3段としても同じであるため「段数」として表記した。放射能濃度とは、最初の放射能量を100%とした値である。磁化Na-P1型ゼオライトの混合量は土壌に対して10%に統一し、溶出助剤を変化させたときの放射能濃度の変化を示す。初回に磁化Na-P1型ゼオライトと溶出助剤を添加し、ミキシング及び磁選操作を行ない、分離された土壌を再度磁選し2段目の操作とし、再々度3段目の操作を行なった。
結果として溶出助剤の濃度に対してほとんど依存性がなかった。全ての操作について3段目の磁選により約20%まで放射能濃度が低下し、80%の放射性Csを除
去できた。1段目の低下が小さいのは土壌に含まれ
る砂鉄類の影響を受けたものである。
図4に各種土壌を用いて磁選操作を行なった場合
の磁選段数による放射能濃度変化の例を示す。この
場合、溶出助剤を4%シュウ酸アンモニウム+0.1%
KCl混合溶液に統一した。放射能の減衰率が大きい
のは川俣、飯館、南相馬の順であった。これは表
(2)-2で示した天然のゼオライトの一種であるバーミキ
ュライトの含有率が多い程除染が困難であるというこ
とを示している。川俣町の土壌について磁化Na-P1ゼ
オライトの混合量を5%と10%の2種で行なったが大き
な差はみられなかった。飯館の高濃度汚染土壌と川
俣や南相馬の低濃度汚染土壌の除染結果を比較し
て、いずれにでも本除染技術が適用可能であること
がわかった。
これまで述べたように平成24年度の現場実証試験
では、磁化ゼオライトを用い、土壌から平均80%もの
優れた除染結果が得られた。様々な磁化ゼオライト
の合成法が試みられ、そのうちのマグネタイトナノ微粒子を合成し、その懸濁液と石炭灰を混ぜて合成する、「16%マグネタイト-ゼオライト時間差合成複合材
図3飯館村の土壌に磁化ゼオライト10%を混合し除染を行なったときの磁選段数による放射能濃度の変
化(溶出助剤の濃度を変えた4種類の結果)。
20
40
60
80
100
放
射
能
濃
度(
%
)
磁選段数
料」(磁化ゼオライト③とよぶ)が最も除染性能が高いことがわかった。平成25年度についても川俣町の水
田にて4月から1号機及び2号機(2号機が導入されたのは6月頃)を用いて現地実証試験を再開した。 b. 除染結果(平成25年度)
平成24年度と平成25年度について、川俣の土壌と磁化ゼオライト③を用い、溶出助剤を4%シュウ酸アンモニウム+0.1%KCl 混合溶液に統一して、1号機により磁選実験を行なった結果を比較したのが図5で
ある。なお用いた土壌は、平成24年度と同じ水田から取り出したものであり、この水田は稲作を行なっていないため、ゼオライトやカリウム塩などの散布を全く行なっていない。川俣土壌について、平成24年の結果は5%および10%の磁化ゼオライトの混合量であるが、いずれにしても2回の磁選で約50%程度の除染結果
を示していた。しかし、平成25年度では、3段の実験
結果を示しており、約70?85%程度土壌に残存して
いることより、15?30%の除染効率にとどまっている
ことがわかる。3段の磁選でより確実に磁化ゼオライト
を磁選したのにもかかわらず、明らかに平成24年度
の結果より平成25年度の除染効率が下回っている。
6月からは2号機を用いて同様の実験を行なった。
その比較を図6に示す。3回の除染では、2号機でもほぼ同様の結果であることがわかる。従って、実験のバラツキの範囲内の結果であることより、平成25年度に行なった磁選機の改造効果を明確に示すことはできなかった。ただし、1段目の立ち下がりが2号機の方が大きい傾向があることより磁選機の吸着性能は向上していることがわかる。
既に述べたように、平成25年度については平成24年度と比べて土壌からの除染効率が低い。試験した川俣土壌の放射能の値(134Cs と137Cs の合計)は約1600?2000Bq/kg の範囲の値を保っていることより、全ての放射性Cs のうち除染し易い放射性Cs のみ洗い流されたということは考えにくい。この除染効率低下の原因として最も疑われるのは放射性Cs の土壌への固着状態の変化である。すなわち、土壌に含まれる粘土鉱物の中でも最も
図6 川俣土壌における磁化ゼオライトを用
いた磁選回数による放射能濃度変化における
1号機と2号機の比較
放射能濃度(%)
磁選段数
図4 各種土壌における磁化ゼオライトを用 いた選回数による放射能濃度の変化(磁化 ゼオライトの混合%を図内に示した)
020
406080100
放射能濃度(%)
磁選段数
放射能濃度(%)
磁選段数
図5 川俣土壌における磁化ゼオライトを用いた磁選
回数による放射能濃度変化における平成24年度
と25年度の比較(磁化ゼオライトの混合%は全て
10%であるが、平成24年度には5%の結果も示した)
放射性Cs を強く取り込んでいると考えられるバーミキュライトの層間へより深く入り込むことにより脱離しにくくなっているということである。
c.使用済み磁化ゼオライトの再使用による除染効率の向上
図7に磁化ゼオライトを用いた土壌からの除染方法をまとめた図を示す。
① 溶出助剤による土壌からの放射性Cs 溶出 ② 磁化ゼオライト混合による放射性Cs 移行
③ 磁選による磁化ゼオライト取り出し(減量化1) ④ 使用済み磁化ゼオライトによる再利用(減量化2) ⑤ 溶出助剤による磁化ゼオライトからの溶出過程 ⑥ 溶出した放射性Cs の乾燥などによる固形化
(減量化3)
の過程により減容化を繰り返し除染?濃縮を行なう。これまで現場で行なってきた除染過程は①から③までである。仮に土壌に対し10%の磁化ゼオライトを使用し、100%磁化ゼオライトに放射性Cs が移行したとすると1/10の減量化ということになる。さらに磁選回収した放射性Cs を含む磁化ゼオライトを同様の除染に使用し、放射性Cs を磁化ゼオライトに吸着したまま再使用できたとすると、2倍の土壌に対し除染ができたことになり、トータル1/20の減量化であり、5回繰り返すことができれば1/50ということになる。ゼオライトの放射性Cs 吸着サイト数と比べ、土壌に含まれる放射性Cs の量はきわめて微量であることから、この繰り返し使用は可能である。ここでは、この繰り返し使用の可否について実験により検討した。さらに、磁化ゼオライトに濃縮された放射性Cs を磁化ゼオライトに対する溶出助剤にて溶出させ、その液を乾燥?固化することにより著しい減量化が可能となる。この⑤以下の過程については本研究では行っていないが将来の重要な試みであると考えられる。 図7 土壌からの放射性Cs 除染による減容化技術 ③ 磁化ゼオライ
ト 磁選過程(減量1)
磁石
除染
土壌放射性セシウム Cs +
Cs +Cs +Cs +Cs +Cs +Cs +Cs +Cs +
Cs +
K +
K
+
K +
K +
K
+
K +
K +
K +
K +
K +
K +
K +
K +
K +
K
+
またはNH 4+イオン(溶出助剤)
Cs +Cs +Cs +
Cs +磁化ゼオライトK +
K +
K +K +K +
K +K +K +K +K +K +
K +K +Cs +Cs +K +K +Cs +K +K +① 放射性Cs 溶出過程② 磁化ゼオライ ト移行過程④ 磁化ゼオライト
再利用(減量2)Cs +K +
K +Cs +K +K +Cs +K +K +Cs +K +K +Cs +K +K +Cs +K +
K ++K +K +K +
K ++K +K +K +K +K +K +Cs +
Cs +Cs +Cs +⑤ 磁化ゼオライト(実験は行なっていない)図8 川俣の土壌を用いた磁化ゼオライトによる土 壌のCs除染効果試験(同じ操作を5回行い再現 性を確認した)
図8に磁性化ゼオライトの再利用を試みた結果を示す。この場合、除染実験で使用し磁選により回収された放射性Csを含む磁化ゼオライトを、試料を室温で放置して乾燥し、再度①から③の実験における無使用の磁化ゼオライトの代わりに使用した。また、従来は最初に磁化ゼオライトと溶出助剤を混合し、ミキシングを行なった後に磁選段数を2?3回行なっている。この実験では、再生磁化ゼオライトの性能を確認し、かつより除染効果の高
い条件ということで、磁選を1回する毎に磁化ゼオライト10%と溶出助剤として2%しゅう酸アンモニウム溶液を
加え、ミキシングを行ない実験をした。その結果、使用済みであるため磁化ゼオライトには土壌の2?5倍程度の放射性Csを吸着している。それにも関わらず、1回目で約10?20%、2回目で約50%の放射性Cs濃度の減衰を確認することができた。図にあるように再現性を確認するため5回同じ実験を行なったがほぼ同じような結果であった。これにより、使用済み磁化ゼオライトの再使用が可能であることを確認した。この理由としては、土壌中
の放射性Csがきわめて少ないため、磁化ゼオライトに十分なイオン吸着性能を有していることと、磁選回収で回収された磁化ゼオライトを使用していることから、回収が困難な磁化ゼオライトが最初の使用で除去されたことも大きな要因であると考えられる。
5.本研究により得られた主な成果
(1)科学的意義
性能の優れた磁性化Na-P1型ゼオライトの製造条件を見出した。大量?安価な製造条件も検討しほぼ確立した。さらに、よりCs+捕獲能の優れたモルデナイトの人工合成と磁性複合化を行なった。大量?安価な製造条件については、装置の温度を高温にできれば可能。安価な原料によるコスト減が必要である。
さらに、平成24年度中に磁選機の1号機を完成させ、福島における除染実験をおこなった。その結果、土壌から約80%の放射性Csを取り除くことに成功した。平成25年度では、磁化ゼオライトの磁石への吸着率と、吸着した磁化ゼオライトをスクレーパーにより回収する回収率双方についての改良を行った2号機を完成させた。除
染性能評価を行なったが、平成24年度と比較して、その性能の向上を示す結果は得られなかった。これは、土
壌への放射性Csの固着状態が変化したためであり、今後さらなる検討が必要である。また、除染実験で使用済み磁化ゼオライトの再使用が可能であることがわかった。これにより、使用磁化ゼオライトの減量化が可能となる。
(2)環境政策への貢献
<行政が既に活用した成果>
特に記載すべき事項はない。
<行政が活用することが見込まれる成果>
まだ改良点は多いが、磁選機の性能は向上しており、いくつかの改良点について検討を行っているところである。この磁化ゼオライトを用いる除染技術については経済産業省から打診があり、現在南相馬の中小企業と共
同で磁選機製造の実用化を進めることを検討しているところである。
6.研究成果の主な発表状況(別添.作成要領参照)
(1)主な誌上発表
<査読付き論文>
1) H. AONO, K. TAMURA, E. JOHAN, R. YAMAUCHI, T. YAMAMOTO, N. MATSUEa, and T. HENMI: Chemistry
Letters, Vol.42(No.6), 589-591(2013).
“Preparation of Composite Material of Na-P1 Type Zeolite and Magnetite for Cs Decontaminatio n”
2) 青野宏通, 横田彩子, 溝口裕己, 田村一将, 渡部祐輔, エルニジョハン, 山内理恵, 松枝直人, 山本徹,
逸見彰男: 環境放射能除染学会誌, Vol.1(No.1), 3-7 (2013).
「土壌からのCs 除染を目的とした磁化Na-P1 型ゼオライトの合成」
3) 逸見彰男, 青野宏通, 田村一将, 松枝直人, エルニジョハン, 山内理恵, 山本徹, 福垣内暁: 環境放
射能除染学会誌, Vol.1(No.1), 9-13 (2013)
「磁化Na-P1型ゼオライトによる土壌Csの除去技術の開発」
4) H. AONO, K. TAMURA, E. JOHAN, R. YAMAUCHI, T. YAMAMOTO, N. MATSUE, and T. HENMI: Journal of
the American Ceramics Society, 96[10], 3218-3222 (2013).
“Preparation of Na-P1 Type Zeolite and its Composite Material with Nanosized Magnetite”
(2)主な口頭発表(学会等)
1) 青野宏通、山本徹、松枝直人、逸見彰男: 第1回環境放射能除染学会(2012)
「磁化ゼオライトによる放射能汚染土壌の除染実用化技術の開発」
2) 青野宏通、渡部祐輔、田村一将、山本徹、松枝直人、逸見彰男: 第25回日本セラミックス協会秋季シンポ
ジウム(2012)
「Cs除染を目的としたゼオライト-フェライト複合材料の開発」
3) 田村一将、青野宏通、渡部祐輔、山本徹、松枝直人、逸見彰男: 第19回ヤングセラミストミーティングin中
四国(2012)
「Cs除染を目的としたゼオライト-フェライト複合材料の開発」
4) 青野宏通、山本徹、松枝直人、逸見彰男: 第2回環境放射能除染学会(2013)
「磁化Na-P1 型ゼオライトによる土壌からの放射性Cs除去技術の開発」
5) 櫻木健司、佐藤雅人、森博、荻田富美幸、青野宏通、逸見彰男、山本徹: 第2回環境放射能除染学会
(2013)
「放射能土壌除染?水系除染を可能にする磁選機の開発」
6) 青野宏通: 愛媛大学-総合地球環境学研究所共同国際シンポジウム
「福島の放射性セシウム除染を目的とする機能性ゼオライトの開発」(招待講演)
7) 青野宏通、山本徹、松枝直人、逸見彰男: 第26回日本セラミックス協会秋季シンポジウム(2013)
「ゼオライト-マグネタイト複合材料の開発と放射性セシウム除染への応用」(招待講演)
8) 山田啓三、板垣吉晃、Erni Johan、山本徹、松枝直人、逸見彰男、青野宏通: 第26回日本セラミックス協
会秋季シンポジウム(2013)
「放射性セシウム除染を目的とした珪藻土からのモルデナイト及びその複合材料の合成」
9) 溝口裕己、板垣吉晃、Erni Johan、山本徹、松枝直人、逸見彰男、青野宏通: 第26回日本セラミックス協
会秋季シンポジウム(2013)
「土壌からの放射性セシウム除染を目的としたNa-P1型ゼオライト-マグネタイト複合材料の合成条件」
10) 田村一将、青野宏通、山本徹、松枝直人、逸見彰男: 第26回日本セラミックス協会秋季シンポジウム
(2013)
「ゼオライト-マグネタイト複合材料を用いた汚染土壌からの放射性セシウム除去」
11) 青野宏通: 第49回ナノバイオ磁気工学専門研究会(2013)
「磁選による土壌からの放射性セシウム除染を目的としたゼオライト-マグネタイト複合材料の開発」(招待講演)
12) 山田啓三、板垣吉晃、Erni Johan、山本徹、松枝直人、逸見彰男、青野宏通: 第20回ヤングセラミストミ
ーティングin中四国(2013)
「除染を目的としたモルデナイトの人工合成」
13) 溝口裕己、板垣吉晃、山本徹、松枝直人、逸見彰男、青野宏通: 第20回ヤングセラミストミーティングin中
四国(2013)
「除染を目的としたNa-P1型ゼオライト-マグネタイト複合材料の開発」
14) 田村一将、青野宏通、山本徹、松枝直人、逸見彰男: 第20回ヤングセラミストミーティングin中四国(2013)
「ゼオライト-マグネタイト複合材料を用いた福島土壌からの放射性セシウム除染」
15) 山田啓三、板垣吉晃、Erni Johan、逸見彰男、青野宏通: 日本セラミックス協会春季大会(2014)
「放射性セシウム除染を目的としたモルデナイト-マグネタイト複合材料の合成」
16) 鍛治紀彰、板垣吉晃、Erni Johan、逸見彰男、青野宏通: 日本セラミックス協会春季大会(2014)
「モルデナイトの人工合成とセシウム吸着特性」
17) 青野宏通:日本地球惑星科学連合連合大会(2014)
「土壌からの放射性セシウム除染を目的としたゼオライト-マグネタイト複合材料の開発」
7.研究者略歴
課題代表者:逸見彰男
九州大学農学研究科修了、農学博士、現在、愛媛大学農学部特命教授
研究分担者:
1) 松枝直人
九州大学農学研究科修了、博士(農学)、現在、愛媛大学農学部教授
2) 青野宏通
愛媛大学工部卒業、博士(工学)、現在、愛媛大学大学院理工学研究科准教授
5ZB-1206 放射能汚染土壌の除染実用化技術の開発
(1)磁性化高CECゼオライトの製造技術の開発
愛媛大学農学部逸見彰男
愛媛大学大学院理工学研究科青野宏通
平成24~25年度累計予算額:7,780千円(うち、平成25年度予算額:2,153千円)
予算額は、間接経費を含む。
[要旨]
福島第一原子力発電所の事故により排出された放射性Csによる土壌の汚染が深刻な問題となっている。この除染方法としてゼオライトを用いる方法が検討されており、我々は石炭火力発電所から排出される石炭灰を原料としてアルカリ処理により合成したNa-P1 型人工ゼオライト
(Na
6Al
6
Si
10
O
32
?12H
2
O)が安価かつ高い陽イオン交換容量(CEC)をもつことに注目し検討を進めた。
一方、磁石の原料であるマグネタイト(Fe
3O
4
)のナノ微粒子も鉄の塩化物のアルカリ処理により合
成することができ、この合成法はNa-P1ゼオライトと酷似していることから同じ容器内に原料を入れ同時にアルカリ処理することによりゼオライト-マグネタイト複合材料(以下、磁化Na-P1型ゼオライトとする)が合成できることを見いだした。これにより水田などに散布し、Cs吸着後の磁場回収が可能となる。
本研究では、石炭灰を原料とするNa-P1型ゼオライトの反応時間やNaOH濃度、NaAlO
2
の添加効果などについて研究した。また、磁化Na-P1型ゼオライトの合成条件を検討し、その性能を評価した。さらには、水田に応用するために、約50kgの大量合成条件について検討を行ない、水田における除染に用いる磁化ゼオライトの最適合成条件を見出した。
また、Na-P1型ゼオライトよりもセシウム除染能力の高いモルデナイトNa
8[Al
8
Si
40
O
98
]?24H
2
O
の人工合成について合成条件の決定を行ない、さらに磁化モルデナイトを合成しその性能評価を行なった。
[キーワード]
土壌除染、放射性セシウム、磁化ゼオライト、Na-P1型人工ゼオライト、モルデナイト
1.はじめに
(1)放射能汚染について
平成23年3月11日に発生した東日本大震災の影響により発生した津波によって、東京電力福島第一原子力発電所の1~4号機は全ての電源を失った。そのため、電力が得られない状態と地震発生時に運転中だった原子炉では燃料を冷やすことができない状態が長時間にわたって続いたことにより2号機では原子炉圧力容器が破損、1、3号機では原子炉で発生した水素爆発により建屋が大きく破損、定期検査中で運転していなかった4号機では3号機から流入した水素により建屋
が破損し、大量の放射性物質が環境中に放出された。放射性物質は風の影響により福島県だけではなく近隣の東北南部や関東地方を含む広い範囲で土壌,水道水,牧草,農産物,畜産物など様々な場所で環境汚染を引き起こしている。1)放射性物質の中に半減期が長いものがあるため残留汚染により福島県の人々は現在も多くの放射能にさらされており、除染作業などの処置を取らなければ今後何十年も放射能におびえた生活が強いられる。2)
今回の事故により排出した放射性物質は多量であり種類も多い。福島原子力発電所から排出された放射性物質は134Cs, 137Cs, 131I, 90Srなどがある。表(1)-1の福島原子力発電所事故における放射性物質の量は、平成23年6月までに大気中に放出された放射性物質の総量(水素爆発による原子炉建屋損傷部からの放出を含む)を試算したものである。減衰に要する時間は放射性物質によって異なり放射線量が元の半分に減衰するのに要する時間(半減期)は、それぞれ134Cs(2.06年),137Cs (30.1年),131I(8.04日),90Sr(29.1年)である。事故から約3年経ち131Iはもう存在せず134Cs は徐々に濃度が低くなってきているが、減衰に要する時間が約30年と長い137Cs,90Srはその影響も長期におよぶ。Cs,Srは周期表においてK,Caとそれぞれ同じ族に属しているため植物や生体はK,Caと間違え吸収してしまう。Csは特に多量に放出されておりKと間違えた植物が吸収するため汚染土壌での農業の生産に大きな打撃となり大きく減退した。Srはガンマ線を出さないため現在の分析方法では早期の検出が難しく、体内に摂取されると骨の無機質部分に取り込まれ生物学的半減期が約50年と非常に長く危険である。
これらのことより、排出量の最も多い放射性Csの除染が最も重要であり、次いで放射性Srについても検討する必要がある。
表(1)-1 解析で対象とした期間での大気中への放射性物質の放出量の試算値(Bq)
出典:原子力安全に関するIAEA 閣僚会議に対する日本国政府の報告書-東京電力福島原子力発電所の事故(平成23年6月)-原子力災害対策本部
(2)除染方法
国際放射線防護委員会ではすべての被爆は社会的、経済的要因を考慮に入れながら合理的に達成可能な限り低く抑えるべきであるというALARA(As Low As Reasonably Achievable)の考えをもっており、放射能に汚染された環境で生活する場合には被ばく量が1-20mSvの範囲に収まるように考えられており長期的には1mSv以下にするべきだと提案している。除染作業を計画するにあたっては①1mSv以下におさえられるか?②除染コストがリーズナブルであるか?③発生する廃棄物は安全に処分しやすいものであるか?などを考慮する必要がある。3)作物や人体への影響を軽減する目的で現在でも除染作業が行われている。
特に農業大国である福島県の土壌における除染は緊急の問題である。土壌除染の研究は多方面で行われておりファイトメディエーションという植物を使って汚染土壌などに含まれる有害物質を分解するなど、無害化する研究がある。しかしファイトレメディエーションは根が届く範囲で
しか効果がなく、廃棄物の処理が難しいといった課題がある。4)通常、土壌の除染方法として主に表土の削り取りがなされている。この方法は作物が存在しないときに表土2~5cmをミニブルドーザーで削り、汚染土壌の大部分を除去することができる。しかし廃棄物量が多量となり大規模に除染することが難しい。また表土を剥いだ後の土壌浸食リスク,土壌生物への影響,生物多様性のロス,肥沃度の高い土壌のロスなど副次的な影響が大きい。そこで農地としての価値を失わない除染方法を検討する必要がある。
(3)土壌除染について
原子力発電所から飛散したCsは土壌に降下し雨水などで水に溶けると1価の陽イオン(Cs+)となる。Cs+はNa+やK+と同様に土壌中の粘土鉱物に固着するため、土壌表層に留まっている。Cs+はほとんど移動せず表層から10cm以内にほとんど存在したままである。5),6)しかしSr2+はアルカリ金属と比較すると粘土鉱物への固着が弱いため表層にはほとんど留まっていない。7),8) Cs+の場合土壌への吸着の強さや様式で分けると、K+,NH4+等の陽イオンと置き換わることができる置換態が10%、有機物との結合態が20%、粘土鉱物等との強固な結合態が70%との報告がある。9)つまり土壌中の大部分は強固な結合体でありその強固な結合態からCs+を取り除く方法を考える必要がある。強固な結合体部分のCs+は植物に吸収されずその場に留まる。10)1価の陽イオンであるCs+は土壌中の負電荷をもつ粘土鉱物,土壌有異物などに吸着される。土壌中の負電荷は、土壌有機物や1:1型層状ケイ酸塩鉱物などpHにより電荷の発現量が異なる変異荷電と、2:1型層状ケイ酸塩鉱物などpHによって電荷量が変化しない永久荷電に大別できる。変異荷電サイトでは、土壌pHが変異荷電サイトの電荷ゼロ点よりも高い場合にのみ負電荷を生じる。変異荷電は、土壌有機物中の解離したカルボキシ基あるいはカルボキシレート基(R-COO-)、金属水酸化物や層状ケイ酸塩鉱物の構造末端に存在する表面水酸基に発現する。土壌有機物や1:1型層状ケイ酸塩鉱物などはCs+の吸着サイトとなりうるが、他の陽イオンに比べ、Cs+に対する選択性は低い。したがって、Ca2+などが多量に存在する場合は吸着が阻害され、一度吸着したとしても容易に他の陽イオ
ンによって追い出されてしまう。一方、永久荷電サイトのCs+の選択性はNa+ やK+ など他の陽イオンと比較して非常に高い。Cs+ のようにイオンサイズが大きく水和しにくい性質をもつイオンほど、イオンの正電荷の中心と粘土の負電荷との距離が近くなり、相互作用が強くはたらくことで吸着されやすいためである。さらに図(1)-1のように永久荷電をもつ2:1型粘土鉱物で層間に面したケイ素四面体シートには、ケイ素四面体6個で構成されるリングの中央部に出来る空間的くぼみがある。層間が閉じ、ケイ素四面体シートどうしが密着すると、上下の層の空孔が合わさった直径0.26nmの空洞ができることになるが、ここに入り込めるのは、水和力が小さく、水を配位しないCs+,K+,NH4+のみでNa+
、
:Cs+
図(1)-1 2:1型層状ケイ酸塩鉱物の同形置
換由来の負電荷へのCs+の吸着
(バーミキュライト,イライトなど)
参考:土壌-植物系における放射性セシ
ウムの挙動とその変動要因
Ca2+のイオンサイズは小さいが水を配位するため空間的くぼみにはいらない。これらのCs+、K+、NH4+が層間に閉じられることによって土壌中にCs+が固着される。しかし2:1型粘土鉱物でもアルミニウム八面体シートに負電荷をもつモンモリナイトのような鉱物は層間の陽イオンと負電荷の発現位置が離れておりCs+、K+、NH4+を固着できない。雲母類はK+を占有しているためCs+を固着しないが風化により端面付近からK+を放出し膨張しそこにCs+が入り込み層間が閉じることで固着する。この部分をフレイドエッジサイトといいCs+の選択性がK+の選択性より1000倍高いという報告もある。土壌中でCs+を固着するのは雲母類(黒雲母,白雲母,イライト), バーミキュライトなどでありこれらからCs+を除去しなければならない。11)
(4)放射性核種を吸着する材料
Cs+やSr2+などの放射性核種を吸着する材料には主にゼオライト, 活性炭, プルシアンブルーなど多く存在するが除染材料として用いられることが検討されているのはゼオライトとプルシアンブルーが主である。プルシアンブルーはNa+やK+など類似のイオンが存在している環境でもCs+を選択的に吸着する能力を持っておりチェルノブイリ事故時に大量に使用され現在も除染材料としての研究が盛んにされている。12)しかしプルシアンブルーは高価(約千円/kg大日精化製)で水質汚濁防止法における排出基準や耐アルカリ性に弱くシアン化水素を発生させるなどの問題があり土壌のように大規模な除染事業には向いていない。一方、ゼオライトは土壌改良剤,脱臭剤,水質浄化剤など幅広い用途で用いられているおり, 吸着,イオン交換機能,分子ふるい機能,触媒,固体酸性などの特性を持っている。ゼオライトには①天然ゼオライト②合成ゼオライト③人工ゼオライトがある。火山灰などが何百万年という長い年月をかけて結晶化した天然ゼオライトは低価格で多量に存在するが品質が一定ではない。試薬を用いて作製する合成ゼオライトは高純度で高性能であるが作製コストが高いため大規模な用途には適していない。廃棄物などを原料として作製する人工ゼオライトは低コストで一定の品質に保つことが可能であり大規模で確実な吸着が可能である。そこで本研究では大規模な汚染土壌の除染を想定しており火力発電所から排出される
のゼオライトの仲間が世の中には存在する。ア
図(1)-2 ゼオライトの一般的な結晶構造
ルミニウム(+3価)とケイ素(+4価)が酸素(?
2価)を互いに共有するため、ケイ素の周りは電気的に中性となり、アルミニウムの周りは?1価となる。この負電荷を補償するために、骨格中に陽イオン(例えばNa+)が必要となる。この陽イオンは、他の金属イオン(H+, K+, Ca2+???など)と容易に交換でき、骨格中には分子レベルの穴(細孔)が開き、水や有機分子などいろいろな分子を骨格中に取り込み吸着することができる。13),14)このようにゼオライトには多くの特性があり吸着材料,イオン交換剤,触媒など多方面に用いられている。
(6)石炭焼却灰を原料として合成されるNa-P1型人工ゼオライト
本研究の原料となる石炭灰は石炭の燃焼やガス化に伴って生じる残物である。平成23年度の石炭灰の発生量は全体で1157万tであった。平成3年には「資源有効利用促進法(リサイクル法)」が制定され、電気事業の石炭灰は利用促進をすべき指定副産物に定められた。リサイクル法において、指定副産物となった石炭灰は排出者である電力会社が速やかに有効利用技術を開発し、リサイクルの推進に努めるべきであることを意味するものである。これにより石炭灰は多くの分野で再利用されておりセメント分野,土木分野,建築分野,農林?水産分野でセメント,コンクリート,地盤改良材,建築ボード,融雪剤などに使われている。15)石炭灰の中には酸化物が含まれており主にSiO2(シリカ),Al2O3(アルミナ)があり、他にFe2O3(鉄),CaO(カルシウム),MgO(マグネシウム),SO42-(硫黄),Na2O(ナトリウム),K2O(カリウム)などが含まれている。また溶融物が急冷して生じた非晶質の部分が多くこれに結晶性鉱物の石英(SiO2),ムライト(2SiO2?Al2O3)が存在する。石炭灰の形状は石炭に含まれる無機質成分が高温燃焼によって溶融し、温度が低下していくことにしたがって再凝固するときに表面張力の作用を受けほぼ球状の形になっている。本研究で用いるJIS石炭灰は節炭器や空気予熱下で少量だが採取されるシンダアッシュと混ぜ合わせて原粉にしたあと粒子径によって分級したものである。16) 石炭灰は多量のシリカ,アルミナを含むため、アルカリ処理によりゼオライトに転換できる。廃棄物である石炭灰は安価で貴重な資源である。本研究では大規模な徐染を想定しており、安価な原料を用いる必要があるため石炭灰に注目し石炭灰からゼオライトを合成しその特性,除染効果を検討した。
石炭灰をNaOH,KOHを用いてアルカリ処理することによりゼオライトを合成することができる。この合成法によりNa-P1型ゼオライト,アナルサイム,グメリナイトゼオライト,チャバザイトなど多くのゼオライトの合成が可能である。17),18)石炭灰からゼオライトへの生成機構は①石炭灰のアルカリ溶液への溶解②中間体アルミノシリケート水和ゲルの形成③ゼオライトの結晶化の3段階から生成されていると考えられる。19)しかし石炭灰中に存在するムライトは簡単に溶解しないためムライト含有量が多い石炭灰の場合はゼオライトの化反応が阻害されるので原料には注意が必要である。20)またNa+自体が土壌中などに混在することで土壌中のpH値が高くなり植生に悪影響を及ぼす可能性があるのでpHにも注意しなければならない。21)本研究ではCs+吸着特性があるNa-P1型人工ゼオライトを用いて除染することを想定している。
Na-P1型ゼオライトは平均細孔径が約3.8?であり図(1)-3のような結晶構造,細孔径をしている。Na-P1型ゼオライトはCs+,Sr2+や重金属の吸着に優れており吸着材料として用いることができる。
22)-24)石炭灰からのNa-P1型ゼオライトの最適合成条件として各石炭灰からの合成, NaOH濃度,
反応時間, CEC(陽イオン交換量)の変化, Al/Si比の検討を行った。
図(1)-3 Na-P1型ゼオライトの結晶構造,細孔径
(7)Na-P1型ゼオライト-マグネタイト複合材料
軟磁性材料であるマグネタイトは化学式FeFe2O4またはFe3O4で表されるスピネル型フェライトである。結晶構造は立方晶でありFeイオンが4個の酸素イオンが形成する四面体の中心(Aサイト)あるいは6個の酸素イオンが形成する八面体の中心(Bサイト)に位置する。AサイトとBサイトの磁気モーメントは逆向きになっており、その磁気モーメントの差分がスピネル型フェライトの磁気モーメントとなる。このような磁性材料はフェリ磁性体という。
マグネタイトは、
Fe2+ + 2Fe3+ + 8OH-→FeFe2O4 + 4H2O
上記のような反応を塩化鉄混合溶液を100℃以下でアルカリ処理することで行うことにより、ナノサイズのマグネタイト粉末を得ることができる。25),26)
土壌中に散布したゼオライトは単独では陽イオンを吸着後回収することができない。これでは放射性Cs+吸着したゼオライトはその場に残るので除染したことにはならない。回収するためには顆粒状にしたゼオライトを用いるなどの方法もあるが表面積が小さくなり接触効率が悪いため吸着能力が劣ると考えられる。そこでゼオライトに磁性体としての機能を持たせる目的で磁性材料であるマグネタイトと複合化させることにした。これより磁石による回収が可能となり粉末状のゼオライトを用いることもできる。合成方法としてゼオライトとマグネタイトの作製方法は類似しており同時に作製することが可能で簡単に合成できると考えた。磁性化ゼオライトは他の研究でも考えられているが除染工程における激しいミキシングにも耐えうる材料を開発する必要がある。27),28)
本研究では様々な作製方法によりNa-P1型ゼオライト-マグネタイト複合材料(以下、磁化ゼオライトとする)を作製し除染により有効な磁化ゼオライトについて詳細な研究を行った。
2.研究開発目的
福島第一原子力発電所の事故により排出された放射性Csによる土壌の汚染が深刻な問題となっている。29),30)この除染方法としてゼオライトを用いる方法が検討されており、我々は石炭火力発電所から排出される石炭灰を原料としてアルカリ処理により合成したNa-P1 型人工ゼオライト(Na
6
Al
6
Si
10
O
32
?12H
2
O)が安価かつ高い陽イオン交換容量(CEC)をもつことに注目し検討を進めてきている。Na-P1型ゼオライトは構造中にCs+とほぼ同じ0.38nmの空隙をもつことから優れ
た選択捕獲特性を持つことが注目される。31)-34)除染方法として、溶液中の放射性Csは比較的容易に回収でき、例えば汚染された水をゼオライト充填したカラムに通すことにより除染することが可能である。しかし、土壌の除染は、ゼオライトを水田などに散布してCs吸着させてもそれを回収する方法がない。
一方、磁石の原料であるマグネタイト(Fe
3O
4
)のナノ微粒子も鉄の塩化物のアルカリ処理により
合成することができ、この合成法はNa-P1ゼオライトと酷似している。
そこで、我々は、同じ容器内に原料を入れ同時にアルカリ処理することによりゼオライト-マグネタイト複合材料(以下、磁化Na-P1型ゼオライトとする)が合成できることを見いだした。これにより水田などに散布し、Cs吸着後の磁場回収が可能となる。これまでに、ゼオライトを合成する際に市販のマグネタイトを混合したり、マグネタイトを合成する際に市販のゼオライトを混合したりといった方法の報告があるが、同時に合成する方法については報告がない。35),36)本研究のゼオライト粒子中にマグネタイトナノ微粒子が入った一体型の複合材料とすることがきわめて重要であり、著者らは、現場の実証試験において、混合物を用いた場合では土壌と撹拌した際にゼオライトとマグネタイトが分離するという失敗をすでに経験している。
本研究では土壌中に存在する放射性Csを除去する方法としてNa-P1型ゼオライト-マグネタイト複合材料の作製を行なった。さらに汚染土壌と磁化ゼオライトを混合し、放射性Csを吸着させた後、磁石選別により磁化ゼオライトのみ回収することで除染することを目的として研究を行なった。
3.研究開発方法
(1)試料の合成
実験室レベルでは、石炭火力発電所焼却飛灰は四国電力JIS-II種を用いた。Na-P1型人工ゼオライトは、石炭焼却灰をアルカリ水熱処理することにより作製した。原料の石炭灰10gに2M NaOH 溶液80ml添加し100℃で加熱還流を24h行った。反応後、遠心分離を用いて上澄み液を除いた後、
沈殿物を乾燥させ粉体を得た。磁化Na-P1型ゼオライトの作製は、石炭灰とFeCl
2?4H
2
Oと
FeCl
3?6H
2
Oの混合溶液に2M NaOH溶液を入れ100℃で24h加熱還流することにより得た。合成後
のゼオライトとマグネタイトの重量比が変化するように調整を行なった。
また、それ以外の合成方法の詳細については結果のところにそれぞれ記述した。
(2)分析方法
1)XRDによる粉末X線回折(XRD)
Cu-Kα(波長λ=1.5405?)をX線源とした粉末X線回折を行った。Cuの波長はλ=1.5405で粉末X線回折装置はRigaku Rint 2000を使用した。測定条件はスキャンスピードを2°/min、管電圧40kV、走査範囲を10~60°とした。
2)波長分散型蛍光X線分析測定(XRF)
理学電機製のRINT-2100を用いて分析を行った。蛍光X線分析により各磁化ゼオライト、マグネタイト粉末試料の構成元素(Si、Al、Fe、Cl、Ca、Na)比率を分析した。軽元素は正確に測定できないためOなどは測定しなかった。
3)走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDX)
日本電子株式会社制のSEM-EDX(JSM-6510LA)を用いて磁化ゼオライトの元素マッピングと粒子の状態を確認した。スポットサイズは約60とした。小さいほうがより粒子の微細な表面状態を見られるがあまり小さくすると2次電子が減り、画像がざらついた感じになる。また、元素マッピングのカウント数が減るためこの大きさにした。加速電圧は20kVで測定した。加速電圧が高くなると波長が短くなり、分解能が向上するためこの値にした。元素マッピングした元素は磁化ゼオライトに含まれる元素(Si、Al、Fe、Cl、Ca、Na、O)を分析した。
4)磁場回収率
100mlの純水と乾燥した約1gの磁化ゼオライト(精密天秤で正確な質量を測っておく)を300ml の三角フラスコに入れ振とう機にて1時間攪拌した。その後、ネオジム磁石(Φ12×5mm 3000gauss)を三角フラスコの中に入れ、磁化ゼオライトが磁石によく触れるように2時間振とう機にて攪拌した。(磁石の重量は測っておく)磁化ゼオライトが付着した磁石を回収し、100mlビーカーに入れ乾燥をした。(ビーカーの重量は測っておく)乾燥した磁化ゼオライトと付着した磁石とビーカーの重量を一緒に測定した。磁場回収前後での磁化ゼオライトの重量変化から磁場回収率を測定した。
5)原子吸光光度計
a. 陽イオン交換容量(CEC)の測定
i. 飽和過程
1gのゼオライト試料を量り50ml遠心管に入れる。30ml塩化カリウム1Mを加え4時間以上振とうした。その後3000rpm遠心分離をかけて、上澄み液を除去した。これを2回繰り返した。但し2回目以降の振とう時間は30分程度で十分であった。
ii. 洗浄過程
飽和したゼオライトに30mlエタノール80%を加え、手で振って遠心分離し、上澄み液を除去した。これを5回繰り返した。5回目終わったら上澄み液1ml程度遠心管に入れて、硝酸銀0.01Mを加え、白い沈殿(AgCl)が生成されるか確認した。白い沈殿があったら下の式のような反応がおこるため塩化カリウムが洗浄されてないことを意味するので再度洗浄した。洗浄出来ていることが確認出来たら上澄み液を除去した。
KCl+AgNO3→AgCl+KNO3
iii. 交換過程
洗浄したゼオライトに30ml塩化アンモニウム1Mを加え、30分程度振とうした。その後、遠心分離して、上澄み液を100mLのメスフラスコに入れた。これを3回繰り返し上澄み液を入れたメスフラスコを100mlになるように純水を入れた。
iv. CEC測定
100mlの2つのメスフラスコに硝酸を1.45ml入れた。用意したCEC測定用溶液を硝酸を入れたメスフラスコを用いて1000倍に希釈した。希釈した液体を原子吸光光度計によりK濃度を測定した。測定値から下の計算式によりCECを求めた。
CEC(cmol/kg)=×希釈濃度××
質量()
b.Cs吸着能
i. 淡水中のCs吸着試験
純水とCsClを用いて100ppmのCs溶液を作り三角フラスコに100mlのCs溶液を入れた。その中にゼオライトを1g入れた。1時間振とうさせた。遠心分離をして上澄み液を回収した。回収した上澄み液:1%硝酸カリウム:純水=1ml:10ml:9mlの割合で希釈した。(Cs+はイオン化傾向が高いため)希釈した液体と元のCs溶液を原子吸光光度計によりCs濃度を測定した。希釈した液体と元のCs溶液の値から計算によりCs吸着率を求めた。
ii. 他イオン共存下でのCs吸着試験
Cs100ppmに対してKCl,NaCl,NH4Clを用いてK,Na,NH4 100,1000,10000ppmの共存溶液を作製した。共存溶液を三角フラスコに100mlのCs溶液を入れた。その中にゼオライトを1g入れた。1時間振とうさせた。遠心分離をして上澄み液を回収した。回収した上澄み液:1%硝酸カリウム:純水=1ml:10ml:9mlの割合で希釈した。希釈した液体と元のCs溶液を原子吸光光度計によりCs濃度を測定した。希釈した液体と元のCs溶液の値から計算によりCs吸着率を求めた。
iii. 海水中のCs吸着試験
1,10,50,100倍希釈した海水にCs100ppmになるようにCsClを入れ三角フラスコに100mlのCs 海水溶液を入れた。ゼオライトを1g入れた。1時間振とうさせた。遠心分離をして上澄み液を回収した。回収した上澄み液:1%硝酸カリウム:純水=1ml:10ml:9mlの割合で希釈した。希釈した液体と元のCs溶液を原子吸光光度計によりCs濃度を測定した。希釈した液体と元のCs溶液の値から計算によりCs吸着率を求めた。
iv. pH変化におけるCs吸着能
塩酸を用いてpH1,2,3,4,5のCs100ppm溶液を作製し三角フラスコに100mlのCs溶液を入れた。その中にゼオライトを1g入れた。24時間振とうさせた。遠心分離をして上澄み液を回収した。回収した上澄み液:1%硝酸カリウム:純水=1ml:10ml:9mlの割合で希釈した。希釈した液体と元のCs溶液を原子吸光光度計によりCs濃度を測定した。希釈した液体と元のCs溶液の値から計算によりCs吸着率を求めた。
6)試料振動型磁力計(VSM)
VSMによりゼオライト、磁化ゼオライト、マグネタイトの磁化履歴(ヒステリシス曲線)を測定した。測定磁場は-8000Oe~8000Oeの範囲で60Oe/secの外部磁場の変化割合で測定した。Ni
は結晶磁気異方性が小さいために磁気トルクによる試料の回転?移動が少ないために用いる。また、常温で強磁性のFe,Coに比べて飽和磁化が小さい。そのためNiにより校正した。
7)電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)
電界放出形走査電子顕微鏡(日立製S-5500)により石炭灰ゼオライト、磁化ゼオライトの表面状態を加速電圧3kV,10万倍の倍率で観察した。
8)透過型電子顕微鏡(TEM)
透過型電子顕微鏡(TEM)によりマグネタイト-ゼオライト複合材料である磁化ゼオライトのゼオライト相にマグネタイト相がどのように入り込んでいるか観察した。観察は、愛媛大学大学院理工学研究科小林千悟准教授に依頼した。
4.結果及び考察
(1)磁化Na-P1ゼオライトの合成方法と性能
1)Na-P1型ゼオライトの合成条件の検討
Na-P1型人工ゼオライトは原料の石炭灰をNaOH溶液でアルカリ処理することにより合成できる。文献では石炭灰をNaOH溶液でアルカリ処理することによりNa-P1型人工ゼオライトを作製している。37),38)しかし合成条件によりCs+吸着には有効ではないと考えられるアナルサイム,ホージャサイトなどの他のゼオライトやヒドロキシソーダライトなどの不純物が生成される。また火力発電所から排出される石炭灰は発電所により組成などの差異が生じるためNa-P1型人工ゼオライトの合成条件を明確にする必要がある。
作製方法は石炭灰,NaOH溶液を丸型フラスコにいれ100℃で加熱還流し反応させた。その後、遠心分離し乾燥,粉砕することで作製した。石炭灰10gに対し2M NaOH溶液80mlを用いてアル
カリ処理することにし濃度の変化とともにNaOH溶液に含まれるNaOH量が均一になるようにNaOH溶液量を変化させた。表(1)-2に各NaOH濃度におけるNaOH溶液量を示す。
本研究では、東北電力,中部電力,四国電力の石炭灰を用いて各石炭灰における変化を評価し磁
化ゼオライト作製のための指標とした。また、水酸化ナトリウム濃度(1, 2, 4, 6 M),反応時間(1, 6, 12, 24, 48, 72 h)における変化を考察するため四国電力JISⅡ種石炭灰を用いてNa-P1型人工ゼオライトを作製し検討を行った。
表(1)-2 各NaOH濃度におけるNaOH溶液容量
a. 各石炭灰のXRD、XRF結果
ゼオライト合成における原料である石炭灰の組成などの違いにより合成される物質に差異が生じると考え各火力発電所の石炭灰を分析した。である。どの石炭灰にも石英(SiO 2)ムライト(Si 2Al 6O 13)のピークが確認できた。ほかにも非晶質の部分があると考えられるが石炭灰の種類による結晶構造の違いはほぼないと考えられる。表(1)-3は各石炭灰におけるXRF 結果である。すべての石炭灰において大部分がSi, Al で構成されており他に少量のNa, Ca, Fe の酸化物の存在が確認できる。ゼオライトの合成にはAl/Si 比が重要になってくるが特に大きな違いはみられなかった。
表(1)-3 XRF で評価した各石炭灰の化学組成
b. 各石炭灰から合成したNa-P1型人工ゼオライトのXRD 、XRF 、CEC 結果
Na-P1型人工ゼオライト(石炭灰ゼオライト)の作製は2MNaOH 溶液を用いて24時間100℃で熱環流により合成した。図(1)-5は各石炭灰から合成したNa-P1型人工ゼオライトのXRD 結果である。すべての試料においてNa-P1型ゼオライト、ムライト、石英のピークが確認でき大きな違いはみられなかった。2MNaOH 溶液のアルカリ処理では石炭灰に元々含まれるムライト、石英は溶解せず残っている。表(1)-4は各石炭灰から作製したゼオライトのXRF 、CEC(陽イオン交換容量)結果である。東北石炭灰から作製したゼオライトのCEC が最も高くAl 含有量が多いことに起因していると考えられる。原料である東北石炭灰はAl 含有量が他の石炭灰に比べて多く原料の組成がゼオライトの特性に影響を及ぼしたと考えられる。
図(1)-4 各種石炭灰のXRD 結果
図(1)-5各石炭灰から合成した石炭灰ゼオライトのXRD結果
表(1)-4XRFで評価した各石炭灰から作製したゼオライトの化学組成、CEC結果
c. 各NaOH濃度で合成したNa-P1型人工ゼオライトのXRD、XRF、CEC結果
bの結果からどの石炭灰を用いて合成しても大きな違いがないことより最も入手しやすい四国JISⅡ種を用いて実験することにした。図(1)-6は各NaOH濃度で合成したNa-P1型人工ゼオライトのXRD結果である。すべての濃度においてNa-P1型ゼオライトのピークが存在しているが
6MNaOH溶液を用いた石炭灰ゼオライトは不純物としてヒドロキシソーダライト(Na4Al3Si3O12)が生成している。ヒドロキシソーダライトはゼオライト郡には含まれず、細孔径は2.2?しかないためCs+吸着には不向きである。また1MNaOH溶液を用いた石炭灰ゼオライトは石英のピークが比較的大きいためあまり石炭灰が溶解されてないと考えられる。表(1)-5は各NaOH濃度から合成した石炭灰ゼオライトのXRF、CEC結果である。1M,6MはAl含有量が比較的多いがCECは高
くない。これは不純物の影響が大きいと考えられる。2M NaOH 溶液を用いた石炭灰ゼオライトはCEC が高く最適条件とした。
表(1)-5 XRF で評価した各NaOH 濃度から合成した石炭灰ゼオライトの化学組成、CEC 結果
d. 各反応時間におけるNa-P1型人工ゼオライトのXRD 、XRF 、CEC 結果
図(1)-7は反応時間変化における石炭灰ゼオライトのXRD 結果である。1h ではゼオライトの生成はみられなかった。また6h は石英のピークが大きく検出されており石英があまり溶解されていないと思われる。24h 以降はあまり変化がみられなかった。表(1)-6は反応時間変化における石炭灰ゼオライトのXRF 、CEC 結果である。1h はゼオライトが生成していないのにもかかわらず215(cmol/kg )のCEC 値を示した。これは中間体としてSiO 4骨格構造中にAl が組み込まれたアルミノシリケートゲルが生成されたものと考えられる。6h 以降CEC 値は増加傾向にあるが一定の値を示していることから作製の容易さ,不純物の少なさを考慮し最適条件は24h とした。
2θ/degree
I n t e n s i t y ●;Hydroxysodalite
●; Zeolite Na-P1◇;Mullite ▽;Quartz 図(1)-6 各NaOH 濃度から合成した石炭灰ゼオライト のXRD 結果
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