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《小王子》日语版

Track0 1 :プロローグ
六歳の時僕は、「体験談」という原生林について書かれた本で、素晴らしい挿絵を見たことがある。それは大蛇のボアが猛獣を飲み込もうとしている絵だった。本にはこんな説明があった。
ボアは獲物を噛まずに丸ごと飲み込みます。すると動けなくなるので、獲物を消化する半年もの間、ずっと眠って過ごします。
僕はジャングルでの冒険についていろいろと考え、自分でも色鉛筆を使って、生まれて初めての絵を描き上げた。その傑作を大人たちに見せ、怖いかどうか聞いてみた。すると、こんな答えが返ってきた。
どうして帽子が怖いんだい?
帽子の絵なんかじゃなかった。ゾウを消化しているボアを描いたのだ。でも、大人にはわからないらしいので、今度はボアの内側の絵を描いてみた。大人には何時だって説明が必要なのだ。僕の二番目の絵では、ちゃんとボアの中にいるゾウが見えていた。しかし大人たちは中が見えようが見えまいが、ボアの絵は片付けて、地理や歴史、算数や文法の勉強をしなさいと、僕を嗜めた。
こうして、6歳にして僕は偉大な画家になるという夢を諦めた。作品第一号と第二号が共に不評で、気持ちが挫けてしまったのだ。
大人というのは、自分たちとは全く何もわかっていないから、いつも子供の方から説明してあげなきゃいけなくて、うんざりする。僕は別の仕事を選ぶ必要に迫られて、飛行機の操縦士になった。そして、世界中をあちこち飛び回った。地理は確かに役に立った。僕は一目で中国とアリゾナを見分ける事ができる。夜間飛行で迷った時など、そういう知識があると本当に助かる。
これまでの人生で、僕はたくさんの重要人物と知り合った。随分多くの大人たちと一緒に暮らしたし、マジカにも見てきた。それでも僕の考えはあまり変わらなかった。僕は物分りのよさそうな人に出会った時には必ず、肌に離さず持ち歩いていた作品第一号を見せ、実験していた。その人が本当に物事の分かる人かどうか、知りたかったから。でも、答えはいつも同じだった。
帽子だね。
その後僕はボアの話も、原生林の話も、星の話もしなかった。話を合わせて、ブリッジやゴルフや、政治やネクタイの話をした。するとその大人は話が分かる相手と知り合えたと言って喜ぶのだ。
Track0 2 :羊
こうして僕は、六年前、サハラ砂漠で飛行機が故障するまで、心を許して話せる相手に出会う事もなく、一人で生きてきた。飛行機はエン

ジンのどこかが壊れていた。整備士も、乗客も乗せていなかったので、僕は難しい修理の仕事を一人でやり遂げるしかなかった。死活問題だった。飲み水は一週間分あるかないかだった。
最初の夜、僕は、人の住む場所から千マイルも離れた砂の上で眠った。大海原を筏で漂流する遭難者より、ずっと孤独だった。だから、夜明けに小さな可愛らしい声で起こされた時、僕がどんなに驚いたか想像してみてほしい。その声は、こう言った。
お願い、羊の絵を描いて。
えっ?
羊を描いて。
雷に打たれたみたいに飛び起きると、目を擦って辺りを見回した。そこには、とても不思議な子供が一人いて、僕を真剣に見つめていた。僕は突然現れたその子供を、目を丸くして見つめた。何度も言うけれど、人の住む所から千マイルも離れていたのだ。しかしその子は道に迷っているようには見えなかった。疲れや餓えや渇きで死にそうになっているようにも、怖がっているようにも見えなかった。人の住む所から千マイルも離れた砂漠の真ん中にいながら、途方に暮れた迷子といった様子は少しもなかったのだ。
ようやく口が聞けるようになると、僕はその子に尋ねた。
君はこんな所で何をしているの?
しかしその子はとても大切な事のように、静かに繰り返すだけ。
お願い、羊の絵を描いて。
バカげた話だが、人の住む所から千マイルも離れて、死の危険にさらされているというのに、僕はその子に言われるままに、ポケットから一枚の紙切れと万年筆を取り出していた。
だけどそこで、僕が一生懸命勉強してきたのは、地理と歴史と算数と文法だけだった事を思い出して、少し不機嫌になりながら、絵は描けないんだと、その子に言った。
そんなの構わないよ。羊を描いて。
僕は羊の絵なんか描いたことはなかったので、自分に描けるたった二つの絵の内の一つを描いてあげた。ボアの外側の絵だ。その時男の子がこういうのを聞いて、僕はびっくりした。
違う、違う、ボアに飲み込まれたゾウなんていらないよ。ボアはとっても危険だし、ゾウは結構場所塞ぎだから。僕の所はとっても小さいんだ。欲しいのは羊、羊を描いて。
そこで僕は羊を描いた。
ううん、駄目だよ。この羊はひどい病気だ。違うのを描いて。
僕は描き直した。男の子は僕を気遣って優しく微笑んだ。
よく見て。これは羊じゃないでしょう。雄羊だよね。角があるもの。
そこで僕はまた描き直した。けれどそれ

も前の二つと同じように拒絶された。
この羊は年を取りすぎてるよ。僕、長生きする羊が欲しいの。
我慢も限界に近付いていた。修理を始めなければと焦っていた。僕はざっと描き殴った絵を男の子に投げ渡した。
これは羊の箱だ。君が欲しがっている羊はこの中にいるよ。
すると驚いたことに、この小さな審査員の顔がぱっと輝いたのだ。
ぴったりだよ。僕が欲しかったのは、この羊さ。ね、この羊草をいっぱい食べるかな。
どうして?
僕の所はとっても小さいから。
大丈夫だよ。君にあげたのは、とっても小さな羊だからね。
そんなに小さくないよ。あれ、羊は寝ちゃったみたい。
こうして僕はこの小さな王子さまと知り合いになった。

王子さまがどこから来たのか分かるまで、かなり時間がかかった。王子さまは僕にはたくさん質問をしてくるのに、こちらからの質問にはほとんど耳を貸さなかったのだ。
少しずつ全てが明らかになっていったのは、王子さまが偶々口にした言葉からだった。それは初めて僕の飛行機を見た時の事だ。
何?これ。
飛行機。空を飛ぶんだ。僕の飛行機さ。
空を飛べると自慢げに話していたら、王子さまは大声で言った。
えっ?じゃ、君は空からおっこちてきたんだ。
まあ、そうだな。
ああ、それはおかしいね。
王子さまは可愛い声で笑い出したが、僕はかなりいらいらした。自分を襲った災難を真面目に受け取って欲しかったのだ。しかし王子さまは続けてこう言った。
それじゃあ、君も空から来たんだね。どの星から来たの?
その瞬間、王子さまがなぜここにいるのかという疑問にさっと光が差し込んだように感じて、僕はすぐに尋ねた。
君はよその星から来たのかい?
しかし王子さまは答えず。飛行機を見て、そっと首を振っただけだった。
これに乗って来たのなら、そんなに遠くからじゃないよね。
そう言うと、物思いに沈んでいった。王子さまはポケットから羊の絵を取り出して、大切そうに眺めていた。
君はどこから来たの?その羊をどこへ連れて行くつもりなの?
この箱がいいのはね、夜になると、羊の小屋になるってところだよ。
そうだね、いい子にしていたら、昼間は羊を繋いでおく綱もあげるよ。それに、綱を結んでおく杭もね。
羊を繋いでおくの?おかしいよ、そんなの。
でも、繋いでおかなかったら、勝手にあっちこっち歩き回って、どこかいなくなっちゃうだろ。
すると、僕の友達はまた

笑い出した。
羊がどこへ行くっていうのさ。
どこにでも。ずっとまっすぐ歩いていて。。。
大丈夫だよ。僕の所は本当に小さいからね。まっすぐに行っても、そんなに遠くには行けないよ。

こうして僕は二つ目のとても大切な事を知った。王子さまのいた星は、家一軒よりやや大きいくらいの大きさなのだ。それほど驚きはしなかった。地球や木星、火星、金星の様に、名前のある巨大な星以外にも、望遠鏡でも見つからないほど小さな星が、何百とあることを知っていたからだ。天文学者がそんな星を発見すると、名前の替わりに番号をつける。例えば、小惑星32 5 といった様に。王子さまがやってきた星は、小惑星B612だと思う。1909年に、トルコの天文学者が一度だけ望遠鏡で観測した星だ。天文学者は国際天文学会で、自分の発見について堂々と発表した。しかしその時は服装のせいで、誰にも信じてもらえなかった。大人なんてそんなもんだ。しかし、小惑星B612に名誉挽回の幸運が訪れた。トルコの独裁者が国民にヨーロッパ風の服を着るように命令し、従わなければ死刑という事になったのだ。そこで天文学者は、1920年、今度はもっと専念された服装で同じ発表を繰り返した。この時は皆が彼の言う事を信じた。
この星の事をこんなに詳しく話して、番号まで教えるのは、大人たちのせいだ。大人は数字が好きだ。数字以外には興味がない。新しい友達の事を話しても、どんな声か、どんな遊びが好きか、ちょうちょう集めているか、といった大切な事は何も聞いてこない。何歳か、何人兄弟か、お父さんの年収はいくらか、といった数字のことばかり聞いてきて、それですっかり知ったつもりになる。
王子さまは本当にいたよ。可愛かったし、笑っていたし、羊を欲しがっていた。だって、羊を欲しがるって事は、間違えなくその人が本当にいるって事の証拠だからね。
こんなふうに話しても、大人は肩を竦め、子供扱いするだけだ。しかし、王子さまが来た星は小惑星B612だよ、と言えば、大人は納得して、それ以上余計な事は聞いてこない。大人なんてそんなもんだ。でも、悪く思ってはいけないよ。子供は大人に対して、広い心で接してあげなきゃね。でも、生きるという事がどういう事なのか、よくわかっている僕たちには、数字なんかどうでもいい。
本当だったら僕は、この物語をお伽話のように始めたかった。昔々、自分よりほんの少し大きい

だけの星に暮らしている小さな王子さまがいました。王子さまは友達をほしがっていました。生きるという事がどういう事なのかわかっている人には、こういう言い方のほうがずっと本当らしく聞こえるだろう。僕はこの本を軽々しく読まれたくない。こういった思い出話を語る事は、僕にとって本当に辛い。僕の友達が羊を連れていってしまって、もう6年になる。こうして彼の事を書くのは、彼を忘れないためだ。友達を忘れてしまうのは悲しい、誰にでも友達がいるわけではない。それに、僕も数字にしか興味のない大人になってしまうかもしれない。そうならないために僕は、絵の具箱と鉛筆を買った。6歳でボアの外側と内側を描いて以来、何も描いていなかった僕にとって、この年でもう一度絵を描くのは大変な事だった。できるだけ、本物そっくりな肖像画を描いてみるつもりだ。でも、ちゃんと描けるかどうかは、自信がない。一枚いいものが描けても、その次はまるで似ていないかもしれない。背丈が難しいし、服の色も迷ってしまう。手探りでやってみるが、もっと大事な細かい部分を間違えてしまうかもしれない。でも、そこは大目に見てほしい。王子さまは詳しい事は何も説明してくれなかったのだ。おそらく彼は僕の事を自分と同じ仲間だと思ったのだろう。しかし残念ながら僕は、箱の中の羊を見る事ができない。少しばかり大人になってしまったのかもしれない。年を取ったのだ。
日を追うごとに僕は王子さまの星の事や、そこからの旅立ち、これまでの旅について知るようになっていった。王子さまが偶々口にした言葉で、少しずつ様子がわかってきた。こうして三日目に、バオバブをめぐる大騒動を知った。これも羊のおかげだった。王子さまが急に心配になったらしくて、こう聞いてきたのだ。
羊が小さな木も食べるって、本当なんでしょう?
うん、本当だよ。
ああ、よかった。
羊が小さな木を食べる事がなぜそんなに大事な事なのか、僕にはわからなかった。しかし、王子さまは更にこう聞いてきた。
だったら、バオバブも食べるよね。
僕は王子さまにバオバブは小さな木じゃなくて、教会の建物と同じくらい大きな木だから、ゾウの群れを丸ごと連れてきても、たった一本のバオバブも食べきれないだろうと教えてあげた。ゾウの群れを思い描いて、王子さまは笑った。
上に上に積み重ねなきゃいけないね。
しかし、続けてなかなか鋭い指摘をした。
バオバ

ブだって、大きくなる前は、小さいんだよね。
そりゃそうだよ。それにしても、どうして羊に小さなバオバブを食べてもらいたいんだい?
何を言ってるの?そんなの当たり前でしょう。
僕は一人でこの難問を解き明かす事になり、散々頭を捻った。つまり、こういう事だ。王子さまの星には、他の星と同じように、よい草と悪い草があった。よい草はよい種から育ち、悪い草は悪い種から育つ。しかし、種は目に見えない。土の中でひっそりと眠っている。その一つが気まぐれに目を覚ますと、伸びをして、おずおずとあどけない小さな茎を太陽に向かって伸ばし始める。それが 赤蕪 やバラだったら、そのままにしておいて構わない。でも、悪い草だと分かったら、すぐに抜き取らなくてはいけない。王子さまの星には、そんな恐ろしい種があった。バオバブの種だ。星の土はどこもかしこもバオバブの種だらけだった。少しでも抜くのが遅れると、バオバブはもう手がつけられなくなる。星全体を覆いつくし、根っ子がつき抜け、穴を開けてしまう。小さな星だと冬過ぎたバオバブで破裂してしまう。
決まりにできるかどうかだね。毎朝、自分の身支度が済んだら、星の手入れに取り掛かる。芽を出したばかりのバラとバオバブはよく似ているんだけど、それを見上げて、バオバブだと分かったら、すぐに抜いてしまう。手間はかかるけど、とっても簡単な事だよ。偶には仕事を後回しにしても大丈夫な時ってあるけど、バオバブでそんな事をしたら、取り返しがつかなくなるんだ。例えばね、ある星に怠け者が住んでいたんだけど、その人は三本のバオバブをほったらかしにしていたばかりに。。。

僕は王子さまの話す通りにその星の絵を描いた。星より巨大な三本のバオバブと途方に暮れる怠け者、お説教臭い事を言うのはあまり好きじゃないけれど、バオバブの脅威は地球ではほとんど知られていないし、小惑星で道に迷った人が危険な目に遭う可能性は、あまりにも大きい。だから僕は一度だけ普段の慎みを忘れて、こう言っておこう。
おーい、子供たち、バオバブに気をつけろ。
僕は友人たちに警告を与えるために、一生懸命この絵を仕上げた。苦労して描いた価値はあった。他はこれほどうまくいかなかった。バオバブを描いた時は、切羽詰って気持ちが高ぶっていたのだ。ああ、小さな王子さま。こうして僕は少しずつ、ささやかで憂鬱な君の人生を理解していった。長い間、君には美

しい夕日しか心を慰める物がなかった事も。僕がこの秘密を知ったのは、四日目の朝。君がこう言った時だ。
僕、夕日が大好きなんだ。夕日を見に行こうよ。
でも、待たなきゃね。
待つって、何を?
日が沈むのをさ。
君はとてもびっくりしたようだった。そして、すぐに笑い出した。
僕、まだ自分の星にいるつもりにたっていたよ。
そうだね。
誰もが知っているように、アメリカが正午の時にはフランスは夕暮れだ。だから、一分でフランスに飛んで行けたら、夕日を見る事ができるけど、残念ながら、フランスは遠すぎる。だけど君の小さな星では、ほんの少し位相を動かすだけでいい、そうすれば見たい時に何時でも、黄昏を眺めていられる。
僕ね、一日に44回も夕日を見た事があるよ。
そう言って、暫くしてからこう付加えた。
ね、悲しくてたまらない時って、夕日が恋しくなるよね。
44回も夕日を見た日は、悲しくてたまらなかったのかい?
しかし、王子さまは答えなかった。
Track0 3:花
五日目、またも羊のおかげで、王子さまの人生のもう一つの秘密が明かされた。いきなり何の前触れもなく、王子さまは僕に聞いてきた。ずっと黙って考えていた問題が、ようなく答えを見出したように。
羊って、小さな木を食べるなら、花も食べるんじゃないかな。
羊は見つけた物は何でも食べるよ。
刺のある花でも?
そう、刺のある花でもね。
だったら、刺って何のためにあるの?
そんな事は知らない。
その時僕はエンジンにかたく食い込んだボルトを外すのに必死になっていた。故障は極めて深刻だった。飲み水も底をつきかけていたし、災厄の事態に怯えていた。
ね、刺は何のためにあるの?
王子さまは一度質問をしたら、その答えを聞くまで絶対にあきらめない。僕はボルトにいらいらしていたので、考えもせず適当に答えた。
刺は何の役にも立たないよ。ただの花の意地悪さ。
えっ?
しかし、一瞬の沈黙の後、王子さまは憤然として言い返してきた。
そんなこと、信じない。花は弱くて無防備なんだ。でも、できるだけの事をして、安心したいんだ。刺があれば、怖い存在になれると思っているんだ。
僕は返事もしなかった。こんな事を考えていたのだ。
このボルトが動かないなら、金槌で叩き壊すしかないな。
しかし、王子さまが再び割り込んできた。
でも、君、君は思ってるの?花が。。。
違う、違う、何とも思っていないよ。思い付

いた事を適当に言っただけさ。僕は今重要な事で頭がいっぱいなんだよ。
重要な事?
王子さまは僕を見ていた。金槌を持って、指先は機械油で真っ黒。王子さまにとっては、ひどく不格好に見えるものの上に屈み込んでいる。
君の話し方は大人みたいだ。何もかもごちゃ混ぜにしている。
そう言われて、僕はちょっと恥ずかしくなった。王子さまは本当に怒っていた。金色の髪が風に揺れていた。
僕は赤ら顔のおじさんが暮らす星に行った事がある。そのおじさんは一度も花の香りをかいた事がない。星を眺めた事もない。誰かを愛した事もない。おじさんは足算以外、何もした事がないんだ。そして一日中、君みたいに繰り返して言ったよ。私は重要人物だ、私は重要人物だってね。そして大威張りに威張って、膨れ上がっている。でも、そんなのは人間じゃない、キノコだ。キノコだよ。
王子さまの顔は怒りのあまり青ざめていた。
何百万年も前から、花は刺を付けている。何百万年も前から、羊はそれでも花を食べる。どうして花がわざわざ役立たずの刺を付けるのか、考えるのは大事な事じゃないっていうの?羊と花との戦いは重要じゃないっていうの?赤ら顔の太ったおじさんの足算よりも、大事でも、重要でもないっていうの?僕は世界中でたった一つだけの花を知っていて、それは僕の星にしか咲いていないのに、羊がある朝何も考えずにパクっとその花を食べてしまっても、そんな事は重要じゃないっていうの?もしも誰かが何百万もの星の中でたった一つの星に咲く花を愛していたら、その人は星空を見上げるだけで、幸せになれる。僕の花はあのどこかで咲いている、と思ってね。でも羊が花を食べてしまったら、それはその人にとって、星の光が全ていきなり消えてしまうって事なんだよ。それが重要じゃないっていうの?
王子さまはそれ以上何も言えなくなった。そして不意に泣き出した。夜になっていた。僕は工具を投げ捨てた。金槌もボルトも、喉の渇きも、迫り来る死も、もはやどうでもよかった。僕の星、この地球に慰めを求めている小さな王子さまがいたのだ。僕は王子さまを両腕で抱きしめ、小さな体を静かに揺すってあげた。
君が愛する花は危ない目になんか遭わないよ。僕が羊の口に嵌める口輪をかいてあげる。花の周りには囲いをかいてあげるよ。僕は。。。
その先は何を言えばいいのか、分からなかった。なんて不器用なんだろう。どうすれば王子さま

の心に届くのか。どうすれば再び一つになれるのか。僕には分からなかった。本当に謎めいている涙の国という所は。。。
すぐに僕は王子さまの花の事を、もっとよく知るようになった。王子さまの星にはもともと花びらが一重の素朴な花が場所もとらず、邪魔にもならずに咲いていた。ところがある日、どこからともなく運ばれてきた種が芽を出した。王子さまは他のものとは似ても似 つかないその芽を見つけて、注意深く観察していた。新種のバオバブかもしれないからだ。しかしそれはすぐに伸びるのをやめ、花を咲かせる準備を始めた。ふっくらと大きく艶やかに蕾が育っていくのを見て、王子さまは奇跡のようなものが現れてくるのを感じていた。しかし花は緑の部屋に隠れたまま、美しい装いにかかりきりだった。慎重に色を選び、ゆっくり衣装を纏い、花びらを一枚ずつ整える。雛罌粟のように皺くちゃな姿は見せたくなかった。これ以上はない輝きを放つ美しい姿で華麗に登場したかった。そう、花はとてもお洒落だった。
謎めいた準備は何日も続いた。そしてある朝、ぴったり日の出の時間に、花は姿を現した。そして、あれほど念入りに装いを凝らしておきながら、欠伸を噛み殺してこう言った。
ああ、たった今目が覚めたばかり、ごめんなさいね。髪がぼそぼそだわ。
しかし王子さまは感動を抑える事ができなかった。
なんて綺麗なんだ、君は。
でしょう?
花は静かに答えた。
私はお日様と一緒に生まれたんですもの。
王子さまは花があまり謙虚ではない事に気付いたが、それでも目が眩むほど美しかった。
そろそろ朝食のお時間ね、お願いしてもよろしいかしら?
王子さまはすっかりドギマギしていたが、如雨露に新鮮な水を汲んできて、たっぷり花にかけてあげた。花はすぐに気まぐれな自惚れで王子さまを困らせるようになった。例えばある日、自分の四本の刺の話をしながらこう言った。
たとえ虎が来ても大丈夫よ。鋭い爪で。。
僕の星には虎はいないよ。それに、虎は草を食べないし。
私、草ではないんですけど。
ごめんなさい。
虎なんかちっとも怖くないけれど、風が吹き込むのは苦手なの。あなた、衝立はないのかしら。
風が吹き込むのが苦手だなんて、植物なのに、困った事だな。この花は結構気難し屋さんだぞ。
暗くなったら、ガラスの覆いを被せてちょうだい?この星はとても寒いわ。作りが悪いのね。前に私がいた所は。。。
花はい

きなり口を噤んだ。種の状態で来たのだから、他の世界の事など何一つ知っているはずがない。花はすぐにばれる嘘をついてしまった事が恥ずかしくて、悪いのは王子さまのせいにしようと、二度三度せきをした
で、衝立は?
探しに行こうとしていたら、君が話しかけてきたんでしょう。
すると花はわざとまたせきをして王子さまの良心を疼かせた。
こうして王子さまは心から愛していたにも関わらず、じきに花の事を信用できなくなっていった。些細な言葉を一一深刻に受け止め、そのたびに不幸になった。
花の言う事なんか、聞かないほうがよかったんだよ。ただ眺めたり、香りを楽しんでいればいいんだ。あの花は僕の星をいい香りで満たしてくれた。それなのに僕はそれを楽しめなかった。虎の爪の話にしても、僕はうんざりしたけれど、花にして見れば、ほろりとさせるつもりだったのかもしれない。あの頃の僕は何もわかっていなかったんだね。言葉ではなく、振る舞いで判断しなくちゃいけなかったんだ。花は僕の星をいい香りで満たし、明るくしてくれた。僕は逃げちゃいけなかったんだ。つまらない見せかけに隠れた花の優しさに気付くべきだった。花って本当に矛盾しているからね、でも僕はまだ子供で、あの花の愛し方がわからなかったんだ。
王子さまは星から出て行くために、渡り鳥の移動を利用したようだ。旅立ちの朝、王子さまは星をきちんと片付けた。活火山を掃除して、煤を丁寧に取り払った。二つの活火山は朝食を温めるのになかなか便利だった。用心にこした事はないので、一つある死火山の煤も払っておいた。綺麗に掃除しておけば、火山は静かに安定して燃えて、噴火はしない。それから王子さまはちょっぴり寂しそうに、生えてきたばかりのバオバブの芽を抜いた。二度と帰ってくるつもりはなかった。その朝はやり慣れた作業が、何もかもとても愛しく感じられた。花に最後の水をやり、ガラスの覆いを被せてあげようとした時、王子さまは自分が泣き出しそうになっている事に気付いた。
さようなら。
王子さまは花に言った。しかし、花は答えなかった。
さようなら。
王子さまは繰り返した。花はせきをした。でも、風のせいではなかった。
私がバカでした。許してください。幸せになってね。
非難の言葉がなかったので、王子さまはびっくりした。すっかり戸惑って、ガラスの覆いを持ったまま立ち尽くした。この穏やかな優しさの意味が分か

らなかった。
そうよ、私、あなたを愛している。あなたが気付かなかったのは私のせいね。もうどうでもいいけど。でもあなたも私と同じくらいバカだったのよ。幸せになってね。ガラスの覆いは捨てて、もういらないから。
でも、風が。。。
風ならそんなにひどくないわ。夜の涼しい空気は体にいいし、私は花ですもの。
でも、動物が来たら。。。
蝶蝶と知り合いになれたかったら、毛虫の二匹や三匹、我慢しなきゃね。蝶蝶って、とても綺麗だって聞いたわ。だって、他に誰が私を訪ねてくれるっていうの?あなたは遠くへ行ってしまうし、大きな動物も全然怖くないわ。私にだって爪があるもの。
そう言って花は無邪気に四本の刺を見せ、こう言った。
そうやっていつまでもぐずぐずしないで、いらいらするから。行くって決めたのなら、すぐに行って。
花は泣いているところを、王子さまに見られたくなかったのだ。それほど自尊心の高い花だった
Track0 4 :星
王子さまは小惑星325、326、327、328、329、330の近くを通りかかった。そこで仕事を探したり、見聞を広げるため、それらの小惑星を一つずつ訪ねる事にした。最初の星には王様が住んでいた。緋色の衣に白点の毛皮を纏い、質素だが、威厳のある玉座に腰掛けていた。王様は自分の権威に執着する絶対君主であるばかりか、自分の星も他の惑星も恒星も、すべてを支配する宇宙の君主だった。しかし王子さまが夕日を見たいので、太陽に沈めと命令してほしいとお願いしても。。権威はまず道理に基づく。。などと理屈や例え話ではぐらかすばかりで、何もしなかった。夕日を見る事もできず、退屈してきた王子さまが暇を告げると、王様は王子さまを法務大臣に任命して、ここに留まらせようとした。しかし王子さまは大臣の職を丁重に断って、結局この星を後にした。
溜息をつきながら去っていく王子さまに、王様は急いで叫んだ。
汝を我が大臣に任命する。
王様は威厳を漂わせていた。
大人って本当に奇妙だな。
王子さまは旅を続けながらそう思った。
二番目の星には自惚れ男が住んでいた。自惚れ男にとって、他人は皆自分のファンなのだ。変な帽子を被っているのはファンの喝采に応えて挨拶をするため。王子さまの拍手に自惚れ男は帽子を持ち上げ、うやうやしくお辞儀をした。王様の所よりは楽しかったが、 5 分も繰り返したら飽きてきた。
その帽子を落とすにはどうすればいい

の?
王子さまは聞いてみた。しかし、褒め言葉しか聞こえない自惚れ男には、質問もまったく聞こえない。ひたすら、私を崇拝しているかい?と聞いてくるばかりだった。王子さまはちょっと肩を竦めながらこう言った。
崇拝しているよ。でも、なぜそんな事に拘るの?
王子さまはその星から立ち去った。
大人ってやっぱり本当に奇妙だな。
王子さまは旅を続けながらそう思った。次の星には、大酒のみが住んでいた。ほんの短い訪問だったが、王子さまはひどく落ち込んでしまった。
何をしているの?
酒を飲んでいる。
なぜ飲んでいるの?
忘れるため。
王子さまはこの男が可哀相になってきた。
何を忘れるため?
恥を忘れるためさ。
王子さまはこの男を救ってあげたいと思った。
何が恥なの?
酒を飲む事が。。。
そう言い終わると、大酒のみは沈黙し、二度と口を開かなかった。王子さまは当惑して、そこから立ち去った。
大人ってやっぱり本当に本当に奇妙だな。
王子さまは旅を続けながらそう思った。四番目は実業家の星だった。実業家は5億162万2731個の星を所有していた。王子さまが会った王様は星を支配してはいたが、所有してはいなかった。これは大きな違いらしい。星を所有すると金持ちになれる。金持ちになると誰かが他の星を見つけた時、それを買える。どうすれば星を所有できるか、誰よりも先にそれを思い付く事だ。実業家より先に星を所有しようと思いついた者は、誰もいなかった。実業家は所有する星を管理する、数えて数え直して、銀行に預ける。つまり、星の数を紙切れに書き、引き出しにしまい、鍵をかけるのだ。
それでおしまい?
それで十分。
僕は花を持っていて、毎日水をあげていったよ。三つの火山を持っていて、毎週煤払いを欠かさなかったよ。用心にこした事はないから、死火山もちゃんと掃除していた。僕が持っている事が、火山にも花にも役に立っていた。でも、あなたはちっとも星の役に立っていないね。
実業家は口を開けたが、返す言葉が見つからなかった。王子さまはそこから立ち去った。
大人ってまったく本当にとんでもないな。
王子さまは旅を続けながらそう思った。五番目の星はとても変わっていた。一番小さな星だった。一本の街灯とそれに灯りを点す点灯人だけでいっぱいだった。無人の星で街灯と点灯人が何の役に立つのか分からなかったけれど、それでも王子さまは点灯人の仕事には、

意味があると考えた。
あの人が灯りを点すと、星や花がもう一つ生まれ出るみたいだ。とても素敵な仕事だ。それはつまり役に立つ仕事という事だ。
しかし、点灯人は赤いチェックのハンカチで額を拭い、こう言った。
ひどい仕事さ。しかもどんどんひどくなっている。
点灯人は朝になると街灯を消して、夜には点す指示を受けていた。しかし、星の自転が年々早くなっていったのに、指示は変わらない。今では、この星は一分で一回回るから、休む暇もなくなった。一分ごとに街灯を点したり消したりしているのだ。
面白いね。この星は一日が一分なんだ。
面白いもんか。俺たちが話し始めて、もう一ヶ月経つんだぞ。
一ヶ月?
そうだ。 30 分。つまり、 30 日だ。
王子さまはこんなにも指示に忠実な点灯人が好きになった。そして、旅を続けながら考えた。
あの人は他の大人たちには軽蔑されるかもしれないけど、僕には唯一人まともに見えた大人だったな。きっと自分以外のものを世話しているからだろうな。友達になれそうだったけど、あの小さな星に二人は住めないし。。。
王子さまは認めたがらないが、残念がっている理由は他にあった。あの星は24時間に1440回の夕日に恵まれているのだ。六番目の星は、前の星より 10 倍大きかった。そこには分厚くて大きな本を書く老紳士が住んでいた。王子さまを見かけると。。おや、探検家がやってきた。。と大声で言った。王子さまは机に腰掛け、息をついた。随分旅をしてきたものだ。老紳士は地理学者で、海や川や町、山や砂漠がどこにあるかをよく知っていた。しかし、探検家ではないので、ぶらぶら出歩かない。ずっと研究室にいて、探検家がきたら話を書きとめ、信用できると分かったら、その発見について調査を始めるのだ。
遠くから来たなら君も探検家だ。君の星について話してくれ。
僕の星はあまり面白くありません。とても小さいんです。火山が三つあります。活火山二つに死火山一つ、花も咲いてます。
我々は花の事は記憶しないよ。
なぜですか。一番綺麗なのに。
花は儚いからだ。地理の本はあらゆる本の中でもっとも確かな物だ。決して古くなる事はない。山は滅多に動かないし、海は滅多に干上がらない。我々は永久不変のものだけを書き記す。
でも、儚いってどういう意味?
すぐに消えてなくなる恐れがある、という事だ。
僕の花もすぐに消えてなくなるかもしれないの?
勿論だ。

の花は儚い。世界から身を守るために、四本の刺しか持っていない。それなのに僕は、花をたった一人っきりで残してきてしまった。
この時はじめて王子さまは刺すような後悔の念に襲われた。しかし、気持ちを切り替えて、こう聞いた。
これからどこを訪ねたらいいでしょう。
地球という惑星にしなさい。なかなか評判がいいよ。
そこで王子さまは旅立った。花の事を思いながら。。。
星の王子さま DISC 2
Track0 1 : 地球
傍白: こういうわけで、七番目の星が地球だった。地球に着いた王子さまは、人っ子一人居ないことに驚いた。もしかして、星を間違えたかな、と不安になってきた。その時、月色の環が、砂の中で解けた。王子さまは一応声を掛けてみた。
王子: こんばんは
ヘビ:こんばんは。
王子: この星は何という星?
ヘビ:地球だよ、アフリカさ。
王子: そうか、それじゃ、地球には誰もいないの?
ヘビ:ここは砂漠だからね。砂漠には誰もいない。地球は大きいんだよ。
傍白: 王子さまは岩に座って空を見上げた。
王子: 星がきらきら光っているのは、旅をしている僕たち皆が、いつか自分の星に帰る時、すぐに見つかるようにかな。見て、あれが僕の星、ちょうど真上にある。でも、なんて遠いんだ。
ヘビ:綺麗な星だね。なぜ地球に来たんだい?
王子: 僕、花とうまくいっていないんだ。
ヘビ:そうか。
王子: 人間はどこ?砂漠ってちょっと寂しいよね。
ヘビ:人間が居ても寂しいさ。
王子: 君って変わった生き物だね。指みたいに細くて。
ヘビ:でも、王様の指よりずっと強いんだよ。
王子: そんなに強いはずはないよ。足もないし、旅もできないじゃない。
ヘビ:私は船より遠くにお前を連れて行ける。
傍白: 蛇は、金のブレスレットのように王子さまの足首に巻き付いた。
ヘビ:私は触れたものを皆土へと返してやる。しかしお前は純粋無垢で、星からやってきたという。
傍白: 王子さまは何も答えなかった。
ヘビ:可愛そうに。この岩だらけの星で、お前はかくも弱い。いつか、自分の星が恋しくてたまらなくなったら、私が力を貸してやろう。
王子: わかったよ。でも、どうして君はいつも謎めいた話し方をするの?
ヘビ:私には全ての謎が解けるからさ。
傍白: そして、どちらも黙り込んだ。王子さまは高い山に登った。これまで山と言えば、膝の高さの三つの火山しか知らなかった。死火山は腰掛代わりに使っ

ていた。
王子: こんなに高い山からなら、この星も人間も全て一目で見渡せるぞ。
傍白: しかし見えたのは、針のように鋭く切りたった岩山の頂ばかりだった。
王子: こんにちは。あなたは誰。友達になってよ。僕寂しいんだ。
傍白: 王子さまはそれがこだまだと知らなかったので、こう考えた。
王子: 変な星だな。どこもかしこも乾いていて、尖がっていて、塩辛い。人間には想像力がなくて言われたことを繰り返すだけ。僕の星には花が咲いていた。あの花はいつも先に話しかけてきた。
傍白: 砂と岩と雪の中を長い間歩いてきた王子さまは、ようやく一本の道を見つけた。そして、道は必ず人間が居る場所へと通じている。王子さまの行き着いた先はバラの花が咲き揃った庭園だった。
王子: こんにちは。
バラ:こんにちは。
傍白: 王子さまはバラたちを凝視した。どれも王子さまの花にそっくりだった。
王子: キミたちは誰なの?
バラ:私たちはバラよ。
王子: そんな。。。
傍白: 王子さまはとても悲しい気持ちになった。王子さまの花は自分は宇宙でたった一つだけの存在と語っていた。それなのに、この庭園だけで同じ花が五千本もあるなんて。
王子: あの花がこれを見たら、ひどく傷つくだろうな。笑いものにならないように、激しく咳をして死んだふりをするかも。そして僕は花を介抱するふりをしなきゃいけなくなるんだ。そうしないと僕に恥じ入らすようとして本当に死んでしまう。
傍白: そして王子さまはこう思った。
王子: この世に一つしかない花を持っていて、豊かだと思っていたけど、僕が持っていたのはただの有り触れたバラの花だったんだ。後は膝までの高さしかない三つの火山、そのうちの一つは永久に火が消えたままかもしれない。これじゃ僕は立派な王子にはなれないよ。
傍白: そして王子さまは草の上に突っ伏して泣いた。
Track02 : キツネ
傍白:キツネが現れたのはその時だった。
キツネ:こんにちは。
王子:こんにちは。
傍白:王子さまは丁寧に答えたが、振り返っても誰もいなかった。
キツネ:ここだよ。リンゴの木の下さ。
王子:君は誰?とっても可愛いね。
キツネ:僕、キツネだよ。
王子:一緒に遊ぼう。僕、今とっても悲しいんだ。
キツネ:君とは遊べない。飼い馴らされていないから。
王子:ああ、ごめんね。でも、飼い馴らすってどういう意味?
キツネ:君はこの辺の人じゃないね。何を探

しているんだい?
王子:人間だよ。ね、飼い馴らすってどういう意味?
キツネ:人間は銃を持っていて狩りをする、全く困ったものだ。でも、鶏を飼っている。いいところはそこだけかな。君、鶏を探しているの?
王子:違うよ。探しているのは友達だ。飼い馴らすって、どういう意味?
キツネ:皆がすっかり忘れていることだよ。絆を作るって意味だ。
王子:絆を作る?
キツネ:そうさ、僕にとって君はまだ他の十万人の男の子と同じ、ただの男の子だ。僕には君は必要ないし、君にも僕は必要ない。君にとって僕はまだ他の十万匹のキツネと同じ、ただのキツネだからね。だけど、君が僕を飼い馴らしたら、僕たちは互いに必要不可欠な存在になる。僕にとって君は世界でたった一人だけの男の子、君にとって僕は世界でたった一匹だけのキツネ。
王子:だんだんわかってきたよ。ある花のことだけど、その花は僕を飼い馴らしていたんだと思うな。
キツネ:そういうこともあるかもね。地球では何でもあるからね。
王子:ああ、地球の話じゃないんだよ。”
キツネ:えっ?他の星?
王子:そう。
キツネ:その星には、猟師はいる?
王子:いないよ。
キツネ:そいつはいいや。鶏はいる?
王子:いないね。
キツネ:思い通りにいかないもんだな。まあいいや、話を続けよう。僕の暮らしは単調だよ。僕が鶏を追う、人間が僕を追う。鶏は皆同じ、人間も皆同じ、おかげで、些か退屈しているんだ。でも、もし君が僕を飼い馴らしてくれたら、僕の暮らしはお日さまが当たったみたいになるよ。僕は足音が聞き分けられる。誰かの足音が聞こえたら、僕は慌てて地面に潜る。でも君の足音は音楽みたいに僕を穴から誘い出す。それに、ほら、あそこに小麦畑が見えるでしょう。僕はパンを食べないから、小麦には全く用がないんだ。だから小麦畑を見ても何も感じない。悲しい話だけどね。でも、君は金色の髪をしているよね。だから、君が僕を飼い馴らしてくれたら、素晴らしい事になる。金色の小麦を見るたびに、僕は君の事を思い出すようになるよ。小麦畑を渡っていく風の音さえ好きになるよ。
傍白:キツネはふと黙って、長い間王子さまを見つめていた。
キツネ:お願い、僕を飼い馴らして。
王子:そうしたいんだけど、あんまり時間がないんだ。友達を見付けて、いろいろたくさん学ばなきゃいけないし。
キツネ:飼い馴らさなきゃ学べないよ。人間には学ぶ時間

なんかない。お店で溺愛のものを買ってくるだけさ。でも、友達を買えるお店はないから、人間にはもう友達がいないんだ。友達が欲しかったら、僕を飼い馴らして。
王子:僕はどうすればいいの。
キツネ:とっても辛抱強くならなきゃね。まず、僕からちょっと離れて、草の中に座るんだ。僕は横目で君を見て、君は何も言わない、言葉は誤解のもとだから。でも、毎日少しずつ、だんだん近くに座れるようになるんだ。
傍白:次の日、王子さまは戻ってきた。
キツネ:できたら、同じ時間に戻ってきたほうがいいよ。例えば、4時に君が来るとすると、僕は3時から嬉しくなってくる。時間が経つにつれて、ますます嬉しくなってくる。4時になると、そわそわして気も漫ろさ。幸福ってどんなものかを知るんだ。でも、君が何時と決めず、適当に来ると、何時に心の準備を始めればいいのか分からなくなる。習慣にする事が大事なんだよ。
王子:習慣って、何なの?
キツネ:随分と忘れがちなもののことさ。ある一日を他の日と区別し、ある時間を他の時間と区別するんだ。例えば、僕を追い回す猟師たちにも習慣がある。毎週木曜日は狩りをせず、村の娘たちと踊るのさ。だから木曜日は素晴らしい日だ。僕は葡萄畑の辺りまで散歩に行ける。でも、もし猟師たちが何時でも好きな日に踊ったら、毎日が皆同じになって、僕は全く休暇がとれなくなる。
傍白:こうして王子さまはキツネを飼い馴らした。出発の時が近付くと、キツネは言った。
キツネ:ああ、泣けてきちゃうよ。
王子:君のせいだよ。僕は君を困らせたくなかったのに、君が飼い馴らしてなんて言ったから。
キツネ:そうだよ。その通りだよ。
王子:でも、君は泣くんだ。
キツネ:そうだよ。その通りだよ。
王子:だったら、君は損しちゃったんじゃないか。
キツネ:僕は得したんだよ。小麦色の分だけ。さあ、もう一度庭園に足を運んで、バラたちを見てきてごらん?君のバラは世界にたった一つしかないバラの花だって、わかるから。そうしたら、戻ってきて僕にさよならを言って、お別れに秘密を一つあげるから。
傍白:王子さまはもう一度バラたちを見に行った。そして、言った。
王子:キミたちはどれも僕のバラとは全然似ていないよ。キミたちはまだ僕にとっては取るに足りない存在だ。飼い馴らされていないし、飼い馴らしてもいないもの。会ったばかりの頃の僕のキツネみたいだ。あのキツネは

他の十万匹のキツネと同じ、ただのキツネだった。でも僕はキツネと友達になった。今では、世界に一匹だけのキツネだよ。キミたちは綺麗さ。でも、空っぽなんだ。誰もキミたちのためには死んでない。勿論、普通の通りすがりの人は僕のバラをキミたちと同じだと思うだろう。でも、僕の花はたった一つで、キミたち全部を合わせたよりも大切なんだ。だって、僕が水をかけてあげたのはあの花だから。ガラスの覆い をかぶせてあげたのも、衝立で守ってあげたのも、ちょうちょになる二三匹を残して毛虫を退治してあげたのも、文句を言ったり、自慢したり、時々黙り込んだりするのにさえ、耳を傾けてあげたのも、あの花だけだから。なぜってあの花は僕のバラの花だから。
傍白: そして王子さまはキツネのところに戻った。
王子: さよならだね。
キツネ: ああ、さよならだ。じゃ、秘密を教えるよ。簡単な事だ。心で見なければ、物事はよく見えない。一番大切な事は、目に見えない。
王子: 一番大切な事は、目に見えない。
キツネ: 君のバラを何よりも大切な物にしたのは、君がバラのために費やした時間なんだ。
王子: 僕がバラのために費やした時間。
キツネ: 人間はこの真義を忘れてしまった。でも、君は忘れてはいけないよ。君は飼い馴らしたものに永遠に責任があるんだ。だから君は君のバラに責任がある。
王子: 僕は僕のバラに責任がある。
Track0 3 : 僕
それは飛行機の故障で砂漠に不時着してから八日目の事だった。僕は水の貯えの最後の一滴を飲みながら、王子さまの話を聞いていた。
ああ、君の思い出話はとても楽しかったよ。でも、飛行機の修理はまだ終わっていないし、水も底をついた。
僕の友達のキツネが言うにはね。。
もうキツネどころじゃないんだよ。
どうして?
僕はもうすぐ喉が渇いて死んでしまうんだ。
もうすぐ死ぬとしても、友達がいたっていうのはいい事だね。僕だってキツネという友達がいて、本当によかったもの。
この子はどれほど危険が差し迫っているか、わかってないんだな。餓えも渇きも感じないのだろう。僅かな火の光で十分なんだ。
しかし王子さまは僕の考えが聞こえたかのように、こう言った。
僕も喉が渇いたよ。井戸を探しに行こう。
僕はやれやれという身振りをした。この広大な砂漠で当てもなく井戸を探すなんて馬鹿げている。それでも僕たちは歩き始めた。何時間も黙りこくって歩いていたら、夜

になって星が見え始めた。渇きのせいか、少し熱っぽかったので、夢見心地で星を眺めた。僕の記憶の中で、王子さまの言葉が躍っていた。
じゃあ、君も喉が渇いているの。
しかし、王子さまは問い掛けには答えず、ただこう言った。
水は心にもいいんだよね。
意味がよく分からなかったが、黙っていた。王子さまにあれこれ聞いても、答えは返ってこないとわかっていたからだ。王子さまは疲れて座り込んだ。僕もその横に座った。
見えない花のおかげで、星が綺麗だね。
そうだね。
砂漠も綺麗だ。
それは本当だった。僕はずっと砂漠が好きだった。砂丘に座る、何も見えない、何も聞こえない。それでも静寂の中で何かが光る、何かが歌う。
砂漠が綺麗なのは、どこかに井戸を隠しているからだよ。
僕は不意に砂漠の不思議な光の秘密がわかってびっくりした。子供の頃、僕が住んでいた古い家には、どこかに宝物が埋まっているという言い伝えがあった。勿論、誰も宝物を発見できなかったし、もしかしたら探そうともしていなかったかもしれない。しかし、その事が家全体に魔法をかけていた。僕の家はその中心の奥深くに秘密を一つ隠していたのだ。 そうだ、家や星や砂漠を綺麗にしているものは目に見えない。
嬉しいよ。君が僕のキツネと同じ考えで。
眠ってしまった王子さまを両腕に抱いて、僕は歩き始めた。胸がいっぱいだった。壊れやすい宝物を運んでいるみたいだった。地球上にこれ以上壊れやすいものはないようにさえ思われた。月の光の中で、僕は王子さまを見つめた。色白の額、閉じた瞳、風に震える髪、僕は思った。今見えているのは外側だけだ。一番大切なものは目に見えない。王子さまの唇が開いて、少し微笑んでいるように見えた。眠っている王子さまを見て、こんなにも胸がいっぱいになるのは。。。この子が一つの花をこんなにも誠実に思い続けているからだ。眠っていても、ランプの炎のように心を照らす、バラの花の面影。そう思うと、王子さまはなおいっそう壊れやすいように思えてきた。ランプは守らなければならない。風の一吹きで灯りは消えてしまう。こんなふうにして歩き続け、僕は明け方井戸を見つけた。僕たちが見つけた井戸はサハラにある普通の井戸とは違っていた。サハラの井戸というと、砂地に掘られただけのただの穴に過ぎない。ところがこの井戸が丸で村にあるような井戸だった。
不思議だね。何もかも揃っているよ。滑

車も桶も綱も。
王子さまは笑って綱を掴むと、滑車を動かした。滑車は久しぶりに風を受けた古い風見鶏のように音を立ててきしんだ。
聞こえる?僕たちが起こしてあげたから、井戸が歌っているよ。
王子さまに無理をさせたくなかったので、僕はこう言った。
やらせてよ。君には重過ぎる。
ゆっくりと桶を井戸の淵まで引き上げ、注意深く置いた。滑車の歌は続いていた。震える水に反射して、太陽の光が煌いた。
僕、この水が飲みたかったんだ。ね、飲ませて。
そうか、君はこれを探していたんだね。
僕は王子さまの唇に桶を近付けた。王子さまは目を閉じて飲んだ。祝福の宴のように、あまい喜びに満ちていた。この水は命を長らえるためだけの、ただの飲み水ではなかった。それは星空の下の方向から、滑車の歌から、僕の腕の力から、生まれたものだ。だから、贈り物のように心に喜びをもたらすのだ。子供の頃、クリスマスツリーの光や、真夜中のミサの音楽や、皆の優しい笑顔が一つに合わさって、僕が受け取るクリスマスプレゼントにいっそうの輝きを与えていたように。
この星の人たちは一つの庭園で五千本のバラを育てるのに、自分たちが探しているものを見つけられない。
見つけられないね。
だけど、皆が探しているものは、たった一つのバラや、ほんの少しの水の中にも見つかるものなのに。
そうだね。
でも、目には見えないんだ。心で探さなきゃいけないんだ。
僕は水を飲んだ。呼吸が楽になった。夜明けを迎えて、砂は蜂蜜色に染まっていた。その色も僕を満ち足りた気分にしてくれた。それなのに、なぜ僕は悲しかったのだろう。
約束は守ってね。
何の約束?
ほら、羊の口輪だよ。僕はあの花に責任があるんだから。
僕はポケットから、いろいろな絵の下書きを引っ張り出した。王子さまは覗き込んで、笑いながら言った。
君の書いたバオバブ、ちょっとキャベツみたいだね。それに、そのキツネは耳がなんだか角みたいだ、長すぎるよ。
酷いな。僕はボアの外側と内側しか描けないんだから。
それでいいんだよ。子供には分かるから。
そこで僕は口輪を鉛筆で描いてあげた。それを手渡す時、胸がギュッと締め付けられる思いがした。
君はこれから何かしようとしているね。僕が知らない事を。
一年前、僕は地球に落ちてきた。明日がその記念日なんだ。
しばらく黙ってから、王子さまは続けた。
落ちてきた場所はね、ここのすぐ

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